[HTT26-P06] 浅層物理探査による盛土崩壊箇所の前縁部地盤の詳細物性構造調査
キーワード:浅層物理探査、盛土崩壊、S波速度、比抵抗
2016年熊本地震時に最大加速度120galの強震動を受けて変状が発生し,さらに地震2ヶ月後の集中豪雨によって盛土の一部が崩落した高規格道路において,道路盛土および周辺地盤の内部物性構造を把握することを目的として浅層物理探査を実施した.道路盛土脚部に補強土壁が施工されていたこと,また地震後に盛土前縁部に抑止杭が打設されていたことにより崩壊体の移動は限定的であった.盛土の部分崩落によって,補強土壁は水平方向に約4m移動するとともに前縁の地盤に半径約20m,最大約2mの隆起を伴う半円状の変状ゾーンが発生した.この地盤変状がどの程度の深さにまで及んでいるかを把握することを目的として,地盤変状ゾーン内外に探査測線を設定して浅部を対象とした物理探査を実施した.適用した探査手法は2次元電気探査および筆者らが考案したハイブリッド表面波探査である.ハイブリッド表面波探査は従来の能動的表面波探査と受動的表面波探査(微動探査)を同一測線上で実施する方法であり,空間的解像度と探査深度を深くすることを可能とする.探査の結果,2次元電気探査では深さ20mまでの比抵抗構造を得ることができた.比抵抗断面は浅部の推定地質構造と調和的であった.一方ハイブリッド表面波探査によるS波速度構造には,地盤変状ゾーン内ではS波速度が著しく小さいこと,低速度層の層厚は6m~10m程度で崩壊の軸部で厚層化していることが認められた.このような特徴は,非変状ゾーンに設定した対象測線の探査断面では認められなかった.このことは,地すべりや盛土崩壊箇所における地盤内部の被影響領域を,浅層物理探査によって把握できることを示している.