JpGU-AGU Joint Meeting 2017

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[EJ]Eveningポスター発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-GI 地球科学一般・情報地球科学

[M-GI29] [EJ] データ駆動地球惑星科学

2017年5月20日(土) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (国際展示場 7ホール)

[MGI29-P11] 大気中ラドン濃度変動の対数周期振動べき乗則の変化点

*岩田 大地1長濱 裕幸1武藤 潤1安岡 由美2 (1.東北大学大学院理学研究科地学専攻、2.神戸薬科大学薬学部放射線管理室)

キーワード:atmospheric radon concentration, earthquake precursor events, log-periodic power law, recurrence plot

ラドンは,天然に存在する無色無臭のウラン系列に属する半減期が約3.8日の放射性の希ガス元素である.ラドン(222Rn)はラジウム(226Ra)がアルファ崩壊することによって生成される.大気中ラドン濃度は,地震発生に関連して異常変動すると報告されてきた.例えば,1995年の兵庫県南部地震発生前に,神戸薬科大学で観測された大気中ラドン濃度は異常変動をし,高い濃度を示したと報告されている(Yasuoka and Shinogi, 1997).このことは地殻中の応力変化が地表からのラドン散逸を促し,大気中ラドン濃度異常を引き起こしたと考えられている(Yasuoka et al., 2009).また1995年兵庫県南部地震の約半年ほど前から,大気中ラドン濃度が対数周期振動を含むべき乗則に従って増加していたことが報告されている(Yasuoka et al., 2006).対数周期振動を含むべき乗則は,臨界現象モデルの一つで,臨界点に向かってゆらぎ(対数周期の振動)をともなって発散する特徴がある.地震発生に関連した対数周期振動のべき乗則は,大気中ラドン濃度のほかに,積算ベニオフ歪(Newman et al., 1995),地下水中の塩化物イオン濃度(Johansen et al., 1996),相対沈降量(Igarashi, 2000)にも確認されている.
 観測データにべき乗則のモデルをあてはめる場合,非線形最小二乗法を行う.そこでは,どの期間のデータにモデルを適用して推定すればよいのかということが問題となる.これまでの研究では,データ期間を適当に区切って誤差を評価することで探索的に行われてきた(例えば,Igarashi, 2000).そこで,本研究では時系列データの構造がどの時点で変化するかを表現するリカレンスプロットという手法を用いて,大気中ラドン濃度の積算値の傾向がどの時点で変化しているかの評価を行い,その結果に基づいてべき乗則のモデルをあてはめた.解析データとして,福島県立医科大学で2003年1月-2011年2月の間に観測された大気中ラドン濃度の積算値を使用した.
 大気中ラドン濃度の積算値に見られるべき乗則は,2011年東北地方太平洋沖地震時に向かって発散している様子が確認された.またリカレンスプロットの結果からは,2008年茨城県沖地震(Mw 6.8)を境に,データの構造が変化していることが確認された.2011年の東北地方太平洋沖地震に関しては,積算ベニオフ歪にもべき乗則の増加が報告されており(Xue et al., 2012),巨大地震発生前のべき乗則に従うエネルギー散逸が大気中ラドン濃度の積算値に現れたと考えられる.