[MIS09-P03] 岩手県広田湾における珪藻化石群集と表層堆積物の季節変化
2011年3月11日に発生した東日本太平洋沖地震では東北地方を中心に広い範囲で津波被害が発生した.岩手県広田湾周辺でも津波による多くの被害が発生し,広範囲にわたり津波起源堆積物が分布した. 本研究では広田湾で2015年7月と2015年10月に採取された表層堆積物試料を用い,広田湾沿岸域における津波後の堆積環境の変化を粒度組成及び珪藻遺骸群集の特徴から明らかにしていくことを目的とした. 本研究の観察対象地点は,岩手県広田湾奥部を東西方向に引いた測線L8(水深7.5〜9.9m)と,測線L9(水深11.1〜13.4m),南北方向に引いた測線L3(水深6.6〜49m)の3測線上である. 粒度分析の結果、2015年6月では湾中央部から湾口にかけて含砂率が低く、泥質が優勢であることがわかった。気仙川河口付近及び湾奥部で含礫率が高くなることが観察された.2015年10月では6月に比べ全体的に泥と砂が拡散していることが観察された.珪藻分析の結果,2015年6月では測線L8において,淡水生種が優位であるが,局所的に海水生種が優位であった.これは気仙川と沿岸流による影響を受けていることが考えられる.測線L9では,全体的に淡水生種が優位だが,海水生種と淡水生種の比は3:7であり,沿岸流などの複雑な影響がないと考えられる.測線L3では、沖合に行くにつれて淡水生種が減り,海水生種が増えていく傾向が見られることから,沖に向かうにつれて気仙川などの影響が薄くなっていくことが推定できる.しかし2015年10月の測線L8では、6月に海水生種の多かった地点の海水生種が減少し、淡水生種が増加していた。 以上粒度分析と珪藻分析の結果から、広田湾における表層堆積物の特徴が明らかになった。粒度分析からは、秋季における湾奥堆積物が春季に比べ砂質物質が増加し、珪藻種群は淡水生種優勢の傾向が確認され、河川からの影響が推定される.