JpGU-AGU Joint Meeting 2017

講演情報

[EJ]Eveningポスター発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS11] [EJ] 結晶成長、溶解における界面・ナノ現象

2017年5月24日(水) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (国際展示場 7ホール)

[MIS11-P06] 黒鉛結晶における表面自由エネルギー密度の評価

*吉村 匠1齊藤 航平1鈴木 孝臣1 (1.信州大学工学部)

キーワード:黒鉛、表面自由エネルギー密度、配向性

緒言

結晶成長を論じるために結晶の表面自由エネルギーについては多くの理論的研究が行われてきた。しかし実験的に固体の表面自由エネルギーを測定するのは不可能と言われ、結晶の表面自由エネルギーを実測した例は非常に少ない。我々はこれまで液体の接触角からさまざまな結晶の表面自由エネルギーを算出し、結晶成長との関係を論じてきた。今回は単一の元素からなるグラファイトに注目し表面自由エネルギー密度と結晶子の配向との関係を議論する。



実験

HOPG,Grafoil.天然のグラファイトの3種類をグラファイト試料として用いた。

HOPGにおいては、結晶子のplane部とedge部に分けて測定した。

接触角は2液法により測定した。水とホルムアミドの2種類の液滴を使用し、それぞれ0.1μℓずつマイクロピペットでサンプル上に滴下した。滴下した液滴をデジタルカメラにより撮影し、パソコン上で接触角の測定を行った。



結果

各サンプルの接触角を測定し、平均接触角を算出した。HOPGではplane部で水79.7°ホルムアミド68.1°、edge部で水52.5°ホルムアミド59.2°となった。Grafoilでは水68.1°ホルムアミド53.4°となった。天然のグラファイトではホルムアミドは53.4°となった。しかし、水では、76°と102°という2つの接触角が測定されたため、それぞれ小さいほうをwater1、大きいほうをwater2とした。



考察

測定された接触角を用い、Wuの調和平均式及びFowkes近似式より各サンプルの表面自由エネルギー密度を算出した。HOPGでは、plane部が27.4mN/m,edge部が44.9mN/mとなった。また、Grafoilは、39.1mN/mとなった。一方、天然のグラファイトは2つの接触角より40.6mN/mと79.5mN/mの2種類の表面自由エネルギーが算出された。それぞれplane部とedge部に相当すると考えられるため、それぞれgraphite(plane),graphite(edge)とした。HOPGのplane部とedge部を比べるとedge部のほうがSSFEの値が大きくなっていることがわかる。それはplane部よりedge部のほうが化学的に不安定なためと考えられる。またHOPG(plane),Grafoil,Graphite(plane)の順にSSFEの値が大きくなっているのはHOPGではステップの少ないのに対して、grafoilではステップの多い面が、graphite(plane)ではステップやキンクが多い面がそれぞれ出ているためと考えられる。