JpGU-AGU Joint Meeting 2017

講演情報

[JJ]Eveningポスター発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS13] [JJ] 山岳地域の自然環境変動

2017年5月25日(木) 15:30 〜 16:45 ポスター会場 (国際展示場 7ホール)

[MIS13-P09] シュミットハンマーを利用した落石調査法の検討

*畠 瞳美1ゴメス クリストファー2奈良間 千之3 (1.新潟大学大学院自然科学研究科、2.神戸大学大学院海事科学研究科、3.新潟大学理学科)

キーワード:落石、シュミットハンマー、SfM、UAV

シュミットハンマーは,Schmidt(1951)によってコンクリートの強度を非破壊で検査する測定機器であり,岩盤工学や岩盤力学,および地形学の分野に応用されている.地形学分野においては,実験室における強度測定のための岩石試料の採取が困難な場所において,岩石・岩盤の強度(あるいは硬度)の測定に用いられてきたほか,風化程度の違いにより反発値が変化することを利用し,モレーンを構成する礫の相対年代の推定に利用されている(たとえば,Winkler,2016).
落石の調査は,発生源となる岩盤斜面の亀裂や節理間隔,発生地域の勾配,および風化の状況といった地質的な特徴などが挙げられるが,それらは定性的な基準に基づいているものが多い.落石調査の定量的な測定法として,ハンマーなどによる打音測定法を用いた岩塊の安定性評価(蒲原ほか,2013)や,Uドップラーを用いた振動測定による報告例(上半ほか,2012)があるが,これらは使用できる環境が限定されている.近寄ることが困難な斜面や岩塊の安定性を評価するための,より安価で定量的な測定方法が望まれている.
そこで本研究では,小型かつ軽量で持ち運びが容易なシュミットハンマーと,安全な遠隔地から調査できるUAVと,レーザーデータを用いて,落石の要因,推定発生時期,発生場所,および地形環境の評価を試みた.現地調査は,ニュージーランド西海岸に位置するフォックス氷河の支流であるガンバレル谷において,5~6mの巨大な礫を対象に単打法を用いて実施した.巨礫のシュミットハンマーの反発値には差異がみられ,新鮮な岩石面では長期間にわたって風化の影響を受けた面よりも反発値がわずかに高くなる傾向がみられた.シュミットハンマー反発値に基づいて風化パターンを調べると,岩石は部分的に風化の影響をうけていない岩盤とつながっており,一方は様々な風化過程の影響を受けていると推測される.このことから,ガンバレル谷にみられる多くの礫は氷河起源によるものではないと考えらえる.また,礫の半分は全く風化していなかったことから,落石は岩盤からの剥落型落石であり,氷河作用で堆積した未固結堆積物ではない.この手法はさらなる改良が必要であるが,落石研究におけるシュミットハンマーの実用度は高いといえる.