[MIS26-P07] プレートテクトニクスを起動したABEL Bombardment:スタグナントリッドテクトニクスからプレートテクトニクスへ
キーワード:ABEL Bombardment、大気海洋成分の二次的付加、プレートテクトニクスの開始、エクロジャイト化
プレートテクトニクスがいつ開始したかは、長い間の議論だった。ここでは、地球と月の地質、ならびに小惑星帯の記録に基づき、プレートテクトニクスの開始は冥王代中期(4.37-4.20Ga)だったことを解説する。プレートテクトニクスの引き金となったのは、4.37-4.20Ga に断続的に起きたABEL Bombardmentと呼ばれる炭素質隕石の飛来である。ABEL Bombardmentによって、それまで無水だった還元的地球(エンスタタイトコンドライト起源)に初めて大気・海洋成分がもたらされた。隕石衝突に伴う衝撃変成作用により炭素質隕石も地球表層の岩石も一瞬にして蒸発したと考えられる。アノーソサイトからなる珪長質の上部地殻(厚さ約21km)と50kmに達する厚いKREEP玄武岩の下部地殻からなる原初大陸は、水を含む揮発性成分の二次的付加に伴って再結晶作用を起こし、大規模なエクロジャイト化が進行した。エクロジャイト化は強力なスラブ引っ張り力を生じ、これによりプレートテクトニクスが開始した。もう一つの重要な要素は、隕石爆撃の規模である。直径1000kmに達する隕石が衝突すると、太平洋サイズのクレーターが形成される。このような巨大隕石は、それまでのスタグナントリッドテクトニクスを破壊した。爆撃による海洋地殻の形成に伴って、バイモーダルなリソスフェアが形成され、スラブ引っ張り力によってプレートテクトニクスが機能し始めた。ABEL Bombardmentによって、大気・海洋が地球で初めて誕生し、プレートテクトニクスを可能にしたことの重要性を考慮すると、冥王代は次の3期に分けることができるだろう。 (1) 初期冥王代 (4.57-4.37Ga), (2) 中期冥王代 (4.37-4.20Ga), and (3) 後期冥王代 (4.20-4.00Ga)である。