JpGU-AGU Joint Meeting 2017

講演情報

[JJ]Eveningポスター発表

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[M-ZZ42] [JJ] 地球科学の科学史・科学哲学・科学技術社会論

2017年5月21日(日) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (国際展示場 7ホール)

[MZZ42-P06] 賀茂別雷神社(上賀茂神社)記録にアーカイブされた自然災害研究

*玉澤 春史1岩橋 清美2加納 靖之3 (1.京都大学大学院理学研究科附属天文台、2.国文学研究資料館古典籍共同研究事業センター、3.京都大学防災研究所附属地震予知研究センター)

キーワード:自然災害、古記録

社寺の史料には,地震や洪水などの自然災害や,低緯度オーロラ,彗星などの天文現象が記されている.特に京都の社寺では,記録を長く逆のぼることができ,また,同じ現象が平行して多数の社寺で記録されていることも多い.現在の知見と合わせることによりこれらの古記録は貴重な近代科学観測以前の科学データとなりうる.記録されている状況が,現在の知識に照らしてどのような自然現象であるのか,また,それぞれの状況を当時のひとびとがどのように認識し,それに対しどのような反応をしめし,どのように対応したのか(たとえば救済や祈祷など)を明らかにすることが可能である.これは自然科学としてのデータだけでなく,当時の自然観と社会とのかかわりの記録という点で,科学技術社会論のデータとしても使える可能性がある.
現在調査を進めている,賀茂別雷神社(上賀茂神社)の社務日記(「日次記」)は,1665年から1911年の247年間にわたり連綿と続く記録である.地震,洪水や低緯度オーロラ,犯罪など,当時の人々が異常と認識した出来事が記されている.昨年度から,既刊の目録を活用し,部分的な史料の撮影などの調査を開始している.1770年に日本各地で目撃されたオーロラについての上賀茂神社の記録をみると,寺社周辺の関係者が集まったり,祈祷をすべきかの議論が深夜まで続いたりと,稀有な天変現象を前に人々がどのような対応をとったかが見て取れる.
地震など他の現象と祈祷との関係を調査することで,その当時の自然観およびその変遷を,現象の規模も含めて議論することにより詳細に見ることが可能である.これらは歴史学,自然科学双方からのアプローチが必須である.京都の社寺の史料は膨大であり,上賀茂神社の社務日記だけでも研究者だけですべて解読することは不可能である.これを解決する手段の一つとして,市民参加による解読が考えられる.このような取り組みは,研究者間の異分野融合だけでなく,市民サイエンスの観点から,市民との融合も有効であり,本研究か過去だけでなく現在の科学技術・学術と市民の関係をも見つめるテーマとなりうる.