JpGU-AGU Joint Meeting 2017

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[O-04] [JJ] キッチン地球科学 -手を動かすことの利点-

2017年5月20日(土) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (国際展示場 7ホール)

[O04-P04] 科学教育と防災教育と論理的思考教育の融合の試み の中での簡易模擬実験

*久利 美和1 (1.東北大学災害科学国際研究所)

キーワード:防災教育 、科学教育

1. 背景
 学校現場における防災教育では「学校教育法 三十条の二」に明示されているように、「知識・技能を実生活に活用する力」の育成が求められている。防災標語の活用や防災標語作成による教育などの実践が行われていたが、震災後は「命を守る」「自分で考える」防災教育が強調されるようになり、教材開発は現在進行中である。
「わかりやすさ」「実践しやすさ」に過剰な重点が置かれると、2010年2月のチリ地震での事例にみられるように、ハザードマップ住民の身近に十分にいきわたっていたにもかかわらず、読み取るべき情報や行動の応用に至らない可能性(気仙沼市2011)や、東日本大震災時の釜石市鵜住居市民センターで事例のように、訓練時に使用していたがため、津波避難には不適切な施設への避難や、ハザードマップが安全マップとして読み替えられる可能性もある(釜石市2014)。

2. 地学への関心度と地震・津波の知識に関する調査
地学を専門としない大学2年相当学生178名を対象に、地学への関心と、地震・津波に関する知識についての調査を行ったところ、地震後の津波の危険性については学生の9割が認識していたが、津波が必ずしも引き波から到達しないことについては、正答率(2割程度)よりも誤認率(4割程度)が高く、事前の関心と正の相関にあり、高関心層がより誤った知識を有していることが示され、経験談のみの災害伝承の課題点が明らかになった。

3. 簡易模擬実験を取り入れた防災教育実践
 2010年より「防災のための基礎科学」として、「たてなみ、よこなみ、よーい・どん」と題した緊急地震速報の仕組みと緊急地震速報を受けての行動について、児童向けに、バネを用いた地震波の伝搬の解説とともに緊急地震速報を伝える講座を開始した。2011年3月11日東日本大震災の当日に避難所となった小学校にて、「たてなみ、よこなみ、よーい・どん」に参加した何名かの低学年児童から「ちゃんとできたよ!」との声がかかった。災害現象および警報に対する具体的なイメージを持つことが、とっさの行動に結びついた事例の一つといえる。

4.地域実装としての可能性
地域防災教育の充実を行うことで、若い世代の定住促進を目指す地域で、試行的ながら、地域の実情に合わせた教育プログラムを開発し、展開する試み(山田・松本2015、長谷川ほか2016)もはじまっている。甚大な被害を生んだ地域での聞き取り調査によれば、「当時海を見に行った」、「津波は来ないと思っていた」といった証言が得られており、防災(特に津波防災)に関する当事者意識の欠如があった。地域社会が安全・安心を担保する上では、行政主導で実施される「ハード」対策に防災教育や避難訓練といった「ソフト」対策を組み合わせることが、効果的だと考え、モデル地域において地域の安全・安心を社会実装することを目的とし、(1) 地質・史料調査による地域災害史の解明、(2) (1)を活用した防災・理科教育、(3) 津波避難訓練の提案・実施、(4) 地域自治組織や市民会議の役割の解明に取り組んでいる。防災・理科教育は防災と理科的な知識・理解の関連付けをねらった教育を意味し、防災だけでなく自然科学への興味・関心の向上を目指し、小型水槽による水理実験をとりいれている。津波を発生させる地震の特徴や津波伝搬の特徴などを伝えることで、引き潮確認後の避難行動ではなく、地震発生後の避難行動が有効であることが伝わることが示せた。