JpGU-AGU Joint Meeting 2017

講演情報

[EE]Eveningポスター発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-EM 太陽地球系科学・宇宙電磁気学・宇宙環境

[P-EM15] [EE] 太陽地球系結合過程の研究基盤形成

2017年5月25日(木) 15:30 〜 16:45 ポスター会場 (国際展示場 7ホール)

[PEM15-P01] 大気成層構造の小型無人航空機・MUレーダー同時観測

*橋口 浩之1森 昂志1Luce Hubert2Kantha Lakshmi3Lawrence Dale3Mixa Tyler3Wilson Richard4津田 敏隆1矢吹 正教1 (1.京都大学生存圏研究所、2.Université de Toulon, CNRS/INSU, IRD, Mediterranean Institute of Oceanography (MIO)、3.Department of Aerospace Engineering Sciences, University of Colorado Boulder、4.Université Pierre et Marie Curie (Paris06); CNRS/INSU, LATMOS-IPSL)

キーワード:MU radar, UAV, Atmospheric turbulence

乱流混合は熱や物質の鉛直輸送に寄与する重要なプロセスであるが、そのスケールが極めて小さいことから観測が難しい現象の一つである。地上から上空に向けて電波を発射し、大気の乱れに散乱されて戻ってくる電波を受信することで、上空の風向風速等を高時間分解能で測定する大気レーダーは、大気乱流からの散乱エコーを観測すること、時間・空間的に連続観測可能である点で、大気乱流の観測装置として優位にあるが、従来空間分解能に限界があった。MUレーダーは滋賀県甲賀市信楽町に設置された、中心周波数46.5MHz、アンテナ直径103m、送信ピーク出力1MWの大気観測用大型レーダーであり、1984年から運用されているが、2004年に高機能化への大幅改修が行われ、レーダーイメージング(映像)観測が可能となった。その後、イメージング観測手法の開発・改良が重ねられ、現在ではレンジ分解能が飛躍的に向上した観測が可能となっている。MUレーダーは現在のところ乱流を最も正確に映像化でき、それらの発生・発達・形成メカニズムや、メソ~総観規模現象との関連を研究する上で最も強力な測器である。例えば、風速の変化が大きいところでは、ケルビン・ヘルムホルツ不安定により乱流が発生することが知られているが、雲底下で持続的に乱流が存在する様子がMUレーダー観測によりイメージ化されている。
近年、下層大気の観測手段として小型無人航空機(UAV)が注目されている。2015年と2016年の6月に気象センサーを搭載した小型UAVとMUレーダーとの同時観測実験を実施した。日米仏の国際共同研究により、コロラド大で開発されたUAVを用いて、MUレーダーとの同時観測実験(ShUREX(Shigaraki, UAV-Radar Experiment)キャンペーン)が行われた。UAVは、小型(両翼幅1m)、軽量(700g)、低コスト(約$1,000)、再利用可能、GPSによる自律飛行可能で、ラジオゾンデセンサーを流用した1Hzサンプリングの気温・湿度・気圧データに加えて、100 Hzの高速サンプリングの気温センサーによる乱流パラメータの高分解能データを取得可能である。UAVの離着陸は、信楽MU観測所から南西へ約1kmの利用休止中の牧草地を借用して行った。飛行方法は予め離陸前にプログラムしておくが、状況に応じて離陸後に飛行方法を変更することも可能であり、約1時間の連続飛行が可能である。
図にMUレーダーのレンジイメージングモードで得られたエコー強度の時間高度変化とUAVに搭載されたセンサーで得られた気温の時間変化を飛行高度とともに示す。15時50分~16時10分にUAVは水平飛行しており、4-5分周期でMUレーダーを中心とした半径400-500mの円を描いて半時計周りに旋回していたが、水平飛行中にも関わらず、大きな気温変化が観測された。気温変化は飛行高度辺りに存在する強いエコー層の上下変動と相関があり、MUレーダーで観測された鉛直流とも良い相関が見られた。その後の時間帯にUAVで測定された気温の鉛直プロファイルから、深い温度逆転層が存在し、強いエコー層はそれに伴うものであると考えられる。測定された気温プロファイルをモデル化し、その気温プロファイルがエコー層と同様に上下変動していると仮定して、気温変化を再現したところ、概ね観測と整合的な結果が得られた。次年度にもUAVを用いた第3回のキャンペーン観測を計画している。