15:30 〜 16:45
[PEM21-P05] 1次元静電ブラソフシミュレーションによる電離圏観測ロケットウェイク近傍の電子速度分布の検討
キーワード:ウェイク、観測ロケット、静電ブラソフシミュレーション、速度分布関数、電離圏
電離圏観測ロケットは電離圏大気中を超音速で運動するため,その後方に航跡(ウェイク)と呼ばれる低プラズマ密度領域を形成する.ロケットのウェイク中では,ウェイク中のUHR 周波数やプラズマ周波数,Zモードカットオフ周波数付近の周波数帯でプラズマ波動が観測されることがYamamoto[PhD. thesis, Tohoku University, 2001] によって報告されている.その後,Endo et al. [JGR, 2015] では, S-520-26 ロケット実験でのプラズマ波動観測データをもとに,その波動のモードが短波長の静電波(静電的電子サイクロトロン高調波(ESCH),UHR モード波動)であると結論された.この波動は,同実験で観測されたホイッスラーモード帯の波動とともに,ロケットのスピン位相角に応じた強度変化を示していた.この結果は,速度空間上で異方性をもつ電子がロケット周囲のウェイクに対応した空間分布をもち,それに応じてそれぞれのプラズマ波動が励起・成長していたことを示唆している.しかし,ウェイク内外においていかなる速度分布のプラズマがどのような空間分布で存在していたかについては未だ明らかになっていない.
そこで我々は,ウェイク近傍における速度分布関数の空間分布について考察するため,一次元空間に設定した低密度領域の両側から背景の高密度プラズマが流れ込む現象を模擬するシミュレーションコードを開発している.磁力線方向の一次元空間を仮定し,空間範囲は-600λD≦X≦600λD(λD:デバイ長)とする.ここで,空間のグリッド幅はΔX=λDとする.初期の真空領域は-25λD≦X≦25λDに設定する.また,粒子の運動は磁力線方向一次元のみを解き,電子の速度空間範囲は-10Vthe≦Ve≦10Vthe(Vthe:電子熱速度),イオンの速度空間範囲は-15Vthi≦Vi≦15Vthi(Vthi:イオン熱速度)として取り扱う.速度空間のグリッド幅は,電子はΔVe=0.1Vthe,イオンはΔVi=0.0025Vtheとする.シミュレーションの時間ステップΔtは,Δt=0.1ωp-1(ωp:プラズマ周波数)として計算する.そのため,計算を安定に解くためのクーラン条件は,電場をEと表すとE/E0≦1(E0 = λDωp2me / e, me:電子質量,e:電気素量)となる.計算機で解く方程式は,電子・イオンのブラソフ方程式及び電場を決定するポアソン方程式に限定する.速度分布関数の時間発展は有理関数CIP法[Xiao et al., CPC, 1996],電荷の分布に対応した電場の分布はフーリエ変換を利用した方法[Birdsall and Langton, Taylor & Francis Group, 2008]で求める.シミュレーションで再現される粒子の速度分布関数及び電場の時間変化は,それらのウェイク軸方向の空間分布とみなす.
現在の設定では,ウェイク境界のすぐ外側に,時間とともに振幅が増大する電場振動が現れ,t=469Δt(下流3.4mm相当)でクーラン条件が破られるため,それ以降の計算は行っていない.しかし,本研究では少なくともウェイク尾部(下流約0.4m)付近までの速度分布関数の議論が必要と考えており,電場振動の選択的減衰,初期ウェイク境界の密度勾配の緩和等の対策を検討している.電子の速度分布異方性に関しては,現コードのt<469Δtの範囲でも現れており,ウェイク内側ではマルチビーム型の電子速度分布関数が、ウェイク境界外側では単一のビーム型分布関数が得られている.前者はウェイク外から内側に向かって電場振動に伴って周期的に流れ込む電子によって,また,後者はウェイク外側から内側に流れ込もうとする電子が境界の分極電場により反射されることによって起きていると考えられる.
本発表では,シミュレーションの設定や手法について概要を説明し計算結果を報告するとともに,特に電子速度分布関数の空間分布やそれがつくられる物理過程に焦点を当て,議論を行う.
そこで我々は,ウェイク近傍における速度分布関数の空間分布について考察するため,一次元空間に設定した低密度領域の両側から背景の高密度プラズマが流れ込む現象を模擬するシミュレーションコードを開発している.磁力線方向の一次元空間を仮定し,空間範囲は-600λD≦X≦600λD(λD:デバイ長)とする.ここで,空間のグリッド幅はΔX=λDとする.初期の真空領域は-25λD≦X≦25λDに設定する.また,粒子の運動は磁力線方向一次元のみを解き,電子の速度空間範囲は-10Vthe≦Ve≦10Vthe(Vthe:電子熱速度),イオンの速度空間範囲は-15Vthi≦Vi≦15Vthi(Vthi:イオン熱速度)として取り扱う.速度空間のグリッド幅は,電子はΔVe=0.1Vthe,イオンはΔVi=0.0025Vtheとする.シミュレーションの時間ステップΔtは,Δt=0.1ωp-1(ωp:プラズマ周波数)として計算する.そのため,計算を安定に解くためのクーラン条件は,電場をEと表すとE/E0≦1(E0 = λDωp2me / e, me:電子質量,e:電気素量)となる.計算機で解く方程式は,電子・イオンのブラソフ方程式及び電場を決定するポアソン方程式に限定する.速度分布関数の時間発展は有理関数CIP法[Xiao et al., CPC, 1996],電荷の分布に対応した電場の分布はフーリエ変換を利用した方法[Birdsall and Langton, Taylor & Francis Group, 2008]で求める.シミュレーションで再現される粒子の速度分布関数及び電場の時間変化は,それらのウェイク軸方向の空間分布とみなす.
現在の設定では,ウェイク境界のすぐ外側に,時間とともに振幅が増大する電場振動が現れ,t=469Δt(下流3.4mm相当)でクーラン条件が破られるため,それ以降の計算は行っていない.しかし,本研究では少なくともウェイク尾部(下流約0.4m)付近までの速度分布関数の議論が必要と考えており,電場振動の選択的減衰,初期ウェイク境界の密度勾配の緩和等の対策を検討している.電子の速度分布異方性に関しては,現コードのt<469Δtの範囲でも現れており,ウェイク内側ではマルチビーム型の電子速度分布関数が、ウェイク境界外側では単一のビーム型分布関数が得られている.前者はウェイク外から内側に向かって電場振動に伴って周期的に流れ込む電子によって,また,後者はウェイク外側から内側に流れ込もうとする電子が境界の分極電場により反射されることによって起きていると考えられる.
本発表では,シミュレーションの設定や手法について概要を説明し計算結果を報告するとともに,特に電子速度分布関数の空間分布やそれがつくられる物理過程に焦点を当て,議論を行う.