[PEM22-P09] ポーラーパッチならびにブロブの電子密度分布と極冠イオン対流速度の関係
キーワード:ポーラーパッチ、ブロブ
今回我々は, 2016年1月11日にEISCATレーダーならびに全天イメージャーで観測されたポーラーパッチならびにブロブのイベント解析結果を報告する。ポーラーパッチは昼間側磁気圏界面における磁力線再結合に伴う極冠域の拡大などによって日照領域のプラズマを極冠域に吸い込むことにより発生し [Lockwood and Carlson, 1992], 高密度のプラズマを E×Bドリフトで夜側まで輸送する特徴がある。また, パッチが夜側の閉じた磁力線の太陽方向フロー領域で観測されるものをブロブと呼ぶ。これらの現象の研究は, 高緯度電離圏 F領域における電子密度変動の物理過程の理解のために重要である。この現象は過去に Zhang et al.[2015]により研究され, Dungeyサイクルがポーラーパッチやブロブの形成に与える影響について分かってきた。しかし, ポーラーパッチやブロブの電子密度分布についてはよく分かっていない。本研究では, 2016年1月11日17:30-22:30 UT(20:00-01:00 MLT)に ESRにより捉えられた, 電離圏 F領域の電子密度上昇に着目した。このとき, 電離圏 E領域における電子密度上昇や, F領域におけるイオン温度上昇は存在せず, オーロラ電子降下や摩擦加熱の影響でないと解釈された。このときの IMFの Bz成分は15:30-16:40 UT, 17:30-18:20 UT, 19:30-23:50 UTの時間帯に南向きであった。さらに, ロングイヤービン( 78°09'N, 16°03'E)における同時の全天イメージャー(LYR-ASI)による OI (630.0 nm)発光強度に, パッチ状の発光を見いだした。以上から, この現象をポーラーパッチ現象と解釈し, 解析を進めた。ESRとLYR-ASIの比較から, 11個のポーラーパッチを同定した。それぞれの電子密度高度分布を詳細に調べた結果高度300-500 kmの電子密度が高い場合と, 高度250-350 kmの電子密度が高い場合の2つの種類があることがわかった。また, Super Dual Auroral Radar Network (SuperDARN)レーダーによって観測されたイオン速度より, 後者の方が前者に比べてイオン速度が大きいことが分かった。ポーラーパッチ内の2つの電子高度分布の違いの原因として, 下記に示すとおり, 極冠域におけるイオンの対流速度の違いが考えられる。すなわち, イオン速度が大きいと中性大気速度との差が大きくなり, 摩擦加熱によってイオン温度が上昇する. そして, イオン温度の上昇に伴い, イオン原子交換反応の反応係数が大きくなり [Schunk et al., 1976], F領域の O+が NO+, O2+に変化する。その後, NO+, O2+と電子が解離再結合することで電子密度が減少したと考えることができる。また, 高高度では, イオン温度の上昇により NO+, O2+のスケールハイトが上昇し, NO+, O2+の密度が上昇したと考えられる。この解釈は, 今回観測された2種類のポーラーパッチ内電子密度高度分布と整合的である。
加えて, EISCAT Tromsø UHF Radar で同時の電離圏電子密度を調べたところ, 同日20:37-21:00 UT(22:00-22:30 MLT)に電離圏 F領域の電子密度上昇を見いだした。同時の GPS-TEC マップより, この電子密度上昇はポーラーパッチが極冠域から閉じた磁力線領域に移った結果のブロブと解釈された。この時間帯はサブストーム回復相であり, 極冠域が縮小したことによって Tromsøが2セル対流パターンの午後側セルの太陽方向の対流領域に位置するようになり, その結果ブロブが Tromsø上を通過したと考えることができる。
加えて, EISCAT Tromsø UHF Radar で同時の電離圏電子密度を調べたところ, 同日20:37-21:00 UT(22:00-22:30 MLT)に電離圏 F領域の電子密度上昇を見いだした。同時の GPS-TEC マップより, この電子密度上昇はポーラーパッチが極冠域から閉じた磁力線領域に移った結果のブロブと解釈された。この時間帯はサブストーム回復相であり, 極冠域が縮小したことによって Tromsøが2セル対流パターンの午後側セルの太陽方向の対流領域に位置するようになり, その結果ブロブが Tromsø上を通過したと考えることができる。