JpGU-AGU Joint Meeting 2017

講演情報

[EE]Eveningポスター発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-PS 惑星科学

[P-PS02] [EE] Small Bodies: Exploration of the Asteroid Belt and the Solar System at Large

2017年5月22日(月) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (国際展示場 7ホール)

[PPS02-P24] イトカワ分光画像解析と「はやぶさ2」可視カメラの光学特性解析

*田辺 直也1巽 瑛理1山田 学2亀田 真吾3鈴木 秀彦4神山 徹5本田 理恵6澤田 弘崇7尾川 順子7小川 和律8諸田 智克9本田 親寿10坂谷 尚哉4早川 雅彦7横田 康弘6山本 幸生7杉田 精司1 (1.東京大学大学院理学系地球惑星科学専攻、2.千葉工業大学、3.立教大学、4.明治大学、5.産業技術総合研究所、6.高知大学、7.宇宙航空研究開発機構宇宙科学研究所、8.神戸大学、9.名古屋大学、10.会津大学)

はやぶさ2が探査するC型小惑星は、 含水鉱物や有機物を多く含んでいると推定されている。そのため、小惑星の詳細物質分析からは生命誕生に重要な水や有機物の起源に関する情報が得られる可能性がある。さらに、太陽系の起源に関する情報も得られるかもしれない。小惑星の試料を精密分析することで小惑星の進化や移動の過程を知ることができる可能性がある。このような情報は太陽系形成の過程に関する重要な制約条件となる。

 はやぶさ2は、このリュウグウの試料を採取して地球に持ち帰る予定である。この際、どのような場所から試料を採取するべきかは非常に重要な課題である。 上記のような情報を得るためには、ごく最近の変成作用である宇宙風化の影響を受けていない試料を採取する必要がある。この実現のため、はやぶさ初号機により取られたイトカワのデータを解析し、宇宙風化の少ない場所がどのような物理的特徴を持った場所に存在するのかを検討した。 加えて、はやぶさ2でも同様の宇宙風化度のスペクトル解析を行うため、光学特性評価を分光カメラONC—Tに対して行った。

 具体的に行ったことは以下の2つである。

1.  はやぶさ初号機のデータを用いて宇宙風化度を評価し、それと相関の強いパラメータを見つけ出すことで、宇宙風化の少ない地点の特徴を見つけ出すこと。
2.  1の手法をはやぶさ2でも行えるように、正確な PSF補正係数を求めること。

 1.に関しては、まず、はやぶさ初号機により撮られたイトカワの画像補正を行った。さらに、宇宙風化の赤化作用を利用して、p-band (960nm)とb-band (429nm)の画像の強度比 (P/B)を取り、これをイトカワ表面の宇宙風化度を表す指標とした。さらに、このP/Bと、物理的なパラメータである表面の傾斜や重力との相関を調べることで、宇宙風化の少ない地点の物理的特徴を見つけ出した。

 以上の解析を、試料採取可能な、レゴリスで覆われた滑らかな地形であるSagamiharaとMUSES-Cについて行った。表面の傾斜に関してはどちらも同様に小さく平坦な地形であったが、P/B比を取るとSagamiharaの方がMUSES-Cよりも大きな値を示しており、宇宙風化が進んでいることが示された。一方で、表面の重力の大きさを比べてみると、Sagamiharaの方がMUSES-Cよりも大きいことが分かった。そこで、SagamiharaとMUSES-Cそれぞれについて、斜面に沿って4本ずつ測線を引き、P/B比と傾斜、P/B比と重力との相関係数を求めた。その結果、P/B比と傾斜の相関係数は約-0.40, P/B比と重力の相関係数は約0.85の値を示していることが分かった。このことから、イトカワ表面の宇宙風化度の分布は傾斜よりも、重力の絶対値に対する正の相関が強いことが分かった。これは表面重力の強い場所ほど表面物質が長時間その場にとどまり続けているということを示唆している。この解釈の一つとして、例えば、小惑星表面の物質が斜面を転がったり、崩れたりすることで起きるのではなく、表面から宇宙空間に飛散していく形で起きていると説明することができる。以上のことから、今後の小天体探査で宇宙風化の少ない試料を採取するには、レゴリスに覆われた場所の中でも重力の弱い地点が適しているとの示唆を得た。

 2.に関しては、Ishiguro (2014)と同様にPSFの式をガウス関数の和で近似し、それぞれのガウス関数の係数を決定することでPSFの式を導出した。係数の決定方法は、まず、較正用の画像データに対して、エッジを取ることで、ぼけのない画像を作り出す。この画像に対して、PSFを畳み込み積分することで、元のぼけを再現する。これを係数を1変数ずつ変化させて繰り返し、元の画像データとの残渣が最小となるように係数を決定した。

 テスト計算としてまず、はやぶさ初号機のデータで行いPSF補正係数を求め、先行研究 (Ishiguro 2014)で求められているPSFを再現できるか試した。その結果得られたPSF と先行研究のPSF との差異は、9.8%となった。さらに、本研究で得たPSFを用いて、はやぶさ初号機の撮影した複数の画像に対して実際にPSF補正を行った。その結果、残渣は光源強度の0.2~0.8%ほどになった。これは、先行研究での補正係数を用いた場合と同程度の残渣であり、先行研究で目標基準としていた光源強度の1%以下も達成している。そこで、これと全く同様の方法で、はやぶさ2のPSF補正係数も算出した。さらに、その値を用いてはやぶさ2の撮影した画像に対してPSF補正を行った所、どの波長域においても、残渣は光源強度の1%以下となった。これにより、はやぶさ2においても、はやぶさと同程度の画像補正を行えるようになった。