[PPS02-P33] 火星衛星探査計画(MMX)のためのLIBSを用いた元素分析
キーワード:LIBS, Martian Moons Exploration (MMX), in situ analysis
火星にはフォボスとダイモスという2つの衛星がある。両衛星の起源は、小惑星が火星の重力によって捕獲されたという小惑星捕獲説[Hunten, 1979]と、初期火星に天体が衝突して、その時に飛散した火星初期物質が集積したという巨大衝突説[Rosenblatt et al. 2016]の2つの説が存在している。
JAXAの火星衛星探査計画(MMX)は、フォボスからサンプルリターンを行い、両衛星の起源を判別することを大目標の1つとしている。起源を判別するためには、回収された試料が衛星形成時の情報を保持している必要があるため、試料回収地点の物質の均質性を、衛星表面その場で調べることが重要となる。搭載が決まっている、ガンマ線・中性子分光計で平均された元素組成を得ることができるが、試料回収範囲の約10 mmの分解能で元素組成を得ることはできない。そこで搭載機器の追加が可能な場合に、我々は1 m以上離れた場所でも1 mm以下の空間分解能で元素分析が可能な、レーザー誘起絶縁破壊分光装置(LIBS)を追加することを提案している。MMXでその場分析を行える時間は約1時間とされているため、数十秒という短時間で計測が可能なLIBSは、MMXに適した機器であるといえる。
試料回収地点付近の物質の不均質性を理解することは、回収試料の地質学的背景を決定づけるために重要である。そこで、我々はMMXに搭載予定の装置を用いて短時間で、フォボス表面と、火星隕石・炭素質コンドライトの類似性を判断するための実験を行った。レーザーは出力が約12 mJで波長が1535nmの小型のレーザーを使用した。分光器で取得したデータは波長が約380 nm~800 nmの範囲を解析で使用した。レーザー光を集光するレンズと試料との間の距離と、分光器用の集光レンズと試料との間の距離は共に約1.5 m、集光光学系の有効径は約20 mmとした。試料は真空容器内に設置し10-3 Pa台になるまで排気した。このような探査の現実的な条件の下で、S/Nの成立性なども含めて検証した。計測した試料は、Allende(炭素質コンドライト)、NWA1068(火星隕石)、Zagami(火星隕石)である。レーザーの繰り返し周波数を10 Hz、分光器の露光時間を1 sに設定し、1試料に対して16箇所で測定を行い、1箇所に対してレーザーを150回照射した。隕石の平均組成を求めるために16箇所の発光スペクトルを平均した。平均スペクトルからは主要元素(Fe, Ca, Al, Mg, Si, Ti)の輝線が検出された。さらにAllendeから火星隕石の発光スペクトルを差し引くと、Allendeに多く含まれるFe, Mgの輝線波長のところは正の値になり、NWA1068とZagamiに多く含まれるAl, Caの輝線波長のところは負の値になった。これよりLIBS計測で得られた発光スペクトルの差は、測定試料の元素組成の差を定性的に表していることがわかり、LIBS計測で火星隕石と炭素質コンドライトが判別できる可能性が高いことが示せた。
次に、その場分析が行える1時間の間での本実験結果の実現可能性を検討した。1測定点あたりの焦点調整や撮像に30秒、測定点の移動に20秒かかると仮定した。また、レーザーの繰り返し周波数は電力の制約上2Hzとし、本実験の条件であった1測定点あたりのレーザー照射回数を150回、測定点を16点で計算すると、測定に必要な時間は約35分となった。これより実際の探査でLIBSを運用できる時間内で測定が行える可能性があることが示せた。
これらの結果は、フォボス上でLIBSを用いることで、フォボスの表面と、小惑星に似た物質、火星に似た物質の類似性を識別できる可能性が高いことを示している。
なお本発表では、エンジニアリングモデルの製作や、それを用いた実験結果も報告する。
JAXAの火星衛星探査計画(MMX)は、フォボスからサンプルリターンを行い、両衛星の起源を判別することを大目標の1つとしている。起源を判別するためには、回収された試料が衛星形成時の情報を保持している必要があるため、試料回収地点の物質の均質性を、衛星表面その場で調べることが重要となる。搭載が決まっている、ガンマ線・中性子分光計で平均された元素組成を得ることができるが、試料回収範囲の約10 mmの分解能で元素組成を得ることはできない。そこで搭載機器の追加が可能な場合に、我々は1 m以上離れた場所でも1 mm以下の空間分解能で元素分析が可能な、レーザー誘起絶縁破壊分光装置(LIBS)を追加することを提案している。MMXでその場分析を行える時間は約1時間とされているため、数十秒という短時間で計測が可能なLIBSは、MMXに適した機器であるといえる。
試料回収地点付近の物質の不均質性を理解することは、回収試料の地質学的背景を決定づけるために重要である。そこで、我々はMMXに搭載予定の装置を用いて短時間で、フォボス表面と、火星隕石・炭素質コンドライトの類似性を判断するための実験を行った。レーザーは出力が約12 mJで波長が1535nmの小型のレーザーを使用した。分光器で取得したデータは波長が約380 nm~800 nmの範囲を解析で使用した。レーザー光を集光するレンズと試料との間の距離と、分光器用の集光レンズと試料との間の距離は共に約1.5 m、集光光学系の有効径は約20 mmとした。試料は真空容器内に設置し10-3 Pa台になるまで排気した。このような探査の現実的な条件の下で、S/Nの成立性なども含めて検証した。計測した試料は、Allende(炭素質コンドライト)、NWA1068(火星隕石)、Zagami(火星隕石)である。レーザーの繰り返し周波数を10 Hz、分光器の露光時間を1 sに設定し、1試料に対して16箇所で測定を行い、1箇所に対してレーザーを150回照射した。隕石の平均組成を求めるために16箇所の発光スペクトルを平均した。平均スペクトルからは主要元素(Fe, Ca, Al, Mg, Si, Ti)の輝線が検出された。さらにAllendeから火星隕石の発光スペクトルを差し引くと、Allendeに多く含まれるFe, Mgの輝線波長のところは正の値になり、NWA1068とZagamiに多く含まれるAl, Caの輝線波長のところは負の値になった。これよりLIBS計測で得られた発光スペクトルの差は、測定試料の元素組成の差を定性的に表していることがわかり、LIBS計測で火星隕石と炭素質コンドライトが判別できる可能性が高いことが示せた。
次に、その場分析が行える1時間の間での本実験結果の実現可能性を検討した。1測定点あたりの焦点調整や撮像に30秒、測定点の移動に20秒かかると仮定した。また、レーザーの繰り返し周波数は電力の制約上2Hzとし、本実験の条件であった1測定点あたりのレーザー照射回数を150回、測定点を16点で計算すると、測定に必要な時間は約35分となった。これより実際の探査でLIBSを運用できる時間内で測定が行える可能性があることが示せた。
これらの結果は、フォボス上でLIBSを用いることで、フォボスの表面と、小惑星に似た物質、火星に似た物質の類似性を識別できる可能性が高いことを示している。
なお本発表では、エンジニアリングモデルの製作や、それを用いた実験結果も報告する。