[PPS03-P06] 模擬低重力下における低速度クレーター形成実験:クレーター直径の重力依存性およびレゴリス粒子固着力の影響の推定
キーワード:Crater formation expertiments, Microgravity, Regolith layer strength
小天体表面における重力加速度は微小である.クレーター観測から,小天体表面の進化の過程や表層の物性を推定するためには,クレーター直径の重力依存性を理解することが重要となる.しかし,重力がクレーター形成に与える影響はこれまで詳細には確かめられていない.数少ない実験例として、高重力下(Schmidt and Housen,1987)と低重力下(Gault and Wedekind, 1977)での高速度実験がそれぞれあり、クレーター直径は重力加速度の-0.165 ~ -0.17乗に比例するという結果が得られている。一方、Takagi et al.(2007)では、重力加速度が10-5 G以下の環境で高速度衝突実験を行ったが、クレーター直径に重力加速度の影響は見られなかった。先行研究の結果の違いの原因を含め,実験データが少ないこともあり重力加速度の影響の問題について解決していない.また,微小重力環境ではレゴリス層の固着力の影響が重力の影響を卓越する条件が存在すると予想される.クレーター形成に対する固着力と重力の影響が遷移する境界は粉体層の固着力・重力加速度・クレーターサイズにより決定されるが, 明確にはわかっていない.
我々は,標的を定荷重ばねで吊るして落下させることで標的にかかる重力加速度を模擬的に小さくする装置を開発し,低速度での衝突クレーター形成実験を行った.標的にはシリカサンド(粒径~150 μm)を用い,弾丸には直径8 mmのステンレス球(密度7.9 gcm-3)およびガラス球(密度2.5 gcm-3)用いた.速度1-5 ms-1の範囲で衝突させた結果,0.01-1 Gの範囲でクレーター直径は重力加速度の約-0.2乗に比例した.これらの重力依存性は高速度衝突での先行研究(Schmidt and Housen,1987; Gault and Wedekind,1977)の結果と調和的である(Kiuchi and Nakamura, 2015, 連合大会).次に,固着力の影響が卓越する境界を観察するため,より固着力の大きい標的物質として,アルミナ粒子(粒径~60 μm)を容器に充填し上方向から圧縮したものを用いた.衝突速度4.5 ms-1で同様のクレーター形成実験を行った結果,1 G下と0.01 G下で形成されるクレーター直径に大きな違いはなかった.重力依存性が見られなかったことから,この条件では固着力の影響が卓越していると考えられる.また,粉体層強度についての理論式(Rumpf, 1970) を用いた見積もりより,シリカサンド(粒径~150 μm)とアルミナ粒子(粒径~60 μm)の間のせん断強度をもつと推定される標的に対してクレーター形成実験を行い,これらの結果をもとに重力支配域と強度支配域の境界条件について定量的に議論する。
我々は,標的を定荷重ばねで吊るして落下させることで標的にかかる重力加速度を模擬的に小さくする装置を開発し,低速度での衝突クレーター形成実験を行った.標的にはシリカサンド(粒径~150 μm)を用い,弾丸には直径8 mmのステンレス球(密度7.9 gcm-3)およびガラス球(密度2.5 gcm-3)用いた.速度1-5 ms-1の範囲で衝突させた結果,0.01-1 Gの範囲でクレーター直径は重力加速度の約-0.2乗に比例した.これらの重力依存性は高速度衝突での先行研究(Schmidt and Housen,1987; Gault and Wedekind,1977)の結果と調和的である(Kiuchi and Nakamura, 2015, 連合大会).次に,固着力の影響が卓越する境界を観察するため,より固着力の大きい標的物質として,アルミナ粒子(粒径~60 μm)を容器に充填し上方向から圧縮したものを用いた.衝突速度4.5 ms-1で同様のクレーター形成実験を行った結果,1 G下と0.01 G下で形成されるクレーター直径に大きな違いはなかった.重力依存性が見られなかったことから,この条件では固着力の影響が卓越していると考えられる.また,粉体層強度についての理論式(Rumpf, 1970) を用いた見積もりより,シリカサンド(粒径~150 μm)とアルミナ粒子(粒径~60 μm)の間のせん断強度をもつと推定される標的に対してクレーター形成実験を行い,これらの結果をもとに重力支配域と強度支配域の境界条件について定量的に議論する。