JpGU-AGU Joint Meeting 2017

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[JJ]Eveningポスター発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-PS 惑星科学

[P-PS08] [JJ] 月の科学と探査

2017年5月20日(土) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (国際展示場 7ホール)

[PPS08-P10] 月における極限状態で形成されたMg, Feと炭素含有残存物の研究

*三浦 保範1 (1.客員(山口, AIC大学))

キーワード:炭素含有物、月、玄武岩

月天体は, 大気火星・金星惑星と大気・海水地球惑星に比べて, 地球から進化したか特異な地球天体であるかの議論が行われている. 本件では, 月は局地的に気体・流体が形成されても全圏的に残存できなかった固体残存天体として議論する.その考えを示す月面の玄武岩質岩石の組成と残留した炭素含有物について議論し, 活動形成初期から全圏的な流体の関与がないことを示すのが本件の研究目的である.

1. 天体の固体岩石は, 微粒子が合体して大きな岩塊を形成し, 天体サイズに増大する. 合体の際に揮発性元素を放出する.

2. 地球型天体には, 三種の全圏天体がある. 固体岩石圏は様々な衝突現象で残存の状態である. 局所的に気体・液体状態が発生し, 全圏的に継続して存在する. 火星・金星は気体が全圏で残存し, 地球は気体と液体圏が残存している.

3. これらの天体規模の三状態変化で共通に存在し, また固化した含有微粒子を形成するのが炭素である. 炭素は極限状態で存在するため, その元素存在量が地球の地殻岩石よりも衝突性の炭素質隕石に富んでいる. そのため, 岩石表面に急冷された炭素含有粒子からなる衝撃性固体表面に残存する. 炭素含有物微粒子は, 状態変化を示す「極限インディケーター」である.

4. 月の玄武岩の岩石は, アポロ月試料においてFeおよびMgの高い含量と炭素含有を示す. Fe, Mgおよび炭素元素の隕石起源からして, 玄武岩は極限状態で火成岩として表面で固化する. 玄武岩組成では, 地表浅所か深部のマントル岩ともその極限状態で形成されるため, 現時点では区別できにくい. 玄武岩形成時に固体粒子に混入した炭素元素は, 高圧炭素(ダイヤモンド源)を表面や内部深部で形成する天体の内部揮発性元素である. これらの炭素含有微粒子を含む急冷岩石は, 電子顕微鏡によるナノテク観察で確認できる. その画像などを本会議で紹介する.

本研究は以下のように要約される. 1. 月面の玄武岩質岩石は, 衝撃の極限状態で形成される特徴を組成から指摘できる. 2. 衝撃を受けたガラス質固化物にFeとMgそして炭素が含有されて残っている. 「極限反応指標」である炭素含有微粒子が、岩石表面に観察できる. 3. 衝撃過程で形成された玄武岩の火成岩は, 天体の表面又地下浅所および深所のマントル岩の内部揮発物の含有する火成岩にも適用できる. 4.本研究では, 玄武岩と炭素含有物の全圏的残存が,地球の海水圏の形成による岩石の継続的変化がなかったことを示す.