JpGU-AGU Joint Meeting 2017

講演情報

[JJ]Eveningポスター発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-PS 惑星科学

[P-PS09] [JJ] 宇宙における物質の形成と進化

2017年5月22日(月) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (国際展示場 7ホール)

[PPS09-P03] アルデヒド、ケトンとアンモニアからの含窒素複素環化合物合成:隕石母天体での模擬有機反応

*宮﨑 惇也1奈良岡 浩1土山 明2 (1.九州大学大学院理学研究院地球惑星科学部門、2.京都大学大学院理学研究科地球惑星科学専攻)

キーワード:化学進化、鉱物-有機物相互作用、水質変質、含窒素化合物、炭素質コンドライト

[序論]
炭素質コンドライトは太陽系の始原的な化学組成を持ち、水や炭素などの揮発性成分を含んでいる。始原的な特徴を持つ一方で、ほとんどの炭素質コンドライトが含水鉱物を持つことから、母天体での水質変質を経験していると考えられている。隕石中の炭素の大半が有機物として存在し、カルボン酸やアミノ酸などの比較的低分子な化合物である可溶性有機物(SOM, 1~30wt%)と、高分子で複雑な構造を持つ不溶性有機物(IOM)に分類される。地球外での鉱物-有機物相互作用に、水質変質が影響を与えていたことが示唆され、太陽系での有機物の化学進化を研究するために、鉱物の役割を明らかにする必要がある。本研究では、分子雲でも見出される簡単な分子であるアンモニア(NH₃)、ホルムアルデヒド(HCHO)、アセトアルデヒド(CH₃CHO)、プロピオンアルデヒド(C₂H₅CHO)、アセトン(CH₃COCH₃)を原料に用いて隕石母天体上の環境を模擬した有機物合成実験を行った。

[実験]
水溶液として、NH₃(1~10)/HCHO(0.1~1)/CH₃CHO(0.01~0.1)/C₂H₅CHO(0.01~0.1)/CH₃COCH₃(0.01~0.1)を様々な濃度比(括弧内はモル比)に調製した6種類の反応溶液に、鉱物(Forsterite(San Carlos)、Magnetite(Utah)、合成Forsterite)粉末や非晶質ケイ酸塩(Mg₂SiO₄)粉末を加え、それぞれを窒素ガス置換したアンプル中で60∼80℃、144~192時間加熱した。鉱物の、有機物合成への影響を調べるために鉱物等が存在しない系の実験も実施した。合計20種類の反応生成物を塩化メチレン/メタノール(2/1,体積比)で抽出し、高速液体クロマトグラフィー質量分析を行った。

[結果と考察]
今回実施した全ての反応系において、アルキルピリジン(CnH2n-5N)、アルキルイミダゾール(CnH2n-3N2)、ヘキサメチレンテトラミン(C6H12N4)が同定できた主な生成物であった。また、未同定だが組成式CnH2n-1N3Oで表される化合物も主な生成物として検出された。アルキルピリジン、アルキルイミダゾールについては、炭素質隕石から検出されている(e.g. Yamashita and Naraoka., 2014)。一方、ヘキサメチレンテトラミンは炭素質隕石からの報告例はないが、極低温での紫外線照射による模擬星間生成物から主な生成物として検出されている(V. Vinogradoff et al., 2011)。非晶質ケイ酸塩、Forsterite(San Carlos)存在下の系ではヘキサメチレンテトラミンの生成量が減少し、アルキルピリジン、アルキルイミダゾールの生成量が増加した。特に、非晶質ケイ酸塩は分子雲で主な固体物質である(Kemper et al., 2004)ことから、地球外での有機物形成に重要な役割を果たしていたことが示唆される。反応中間体や、反応による鉱物相の変化を明らかにするために、さらなる実験が必要である。


[参考文献]
⋅Yamnashita Y. and Naraoka H. (2014) Two homologous series of alkylpyridines in Murchison meteorite. Geochemical Journal 48: 519-525.
⋅F. Kemper, W. J. Vriend, and A. G. G. M. Tielens(2004) THE ABSENCE OF CRYSTALLINE SILICATES IN THE DIFFUSE INTERSTELLAR MEDIUM. The Astrophysical Journal, 609, 826–837
⋅V. Vinogradoff, F. Duvernay, G. Danger, P. Theulé, and T. ChiavassaNew insight into the formation of hexamethylenetetramine (HMT) in interstellar and cometary ice analogs. Astoronomy& Astrophysics 530, A128