JpGU-AGU Joint Meeting 2017

講演情報

[EE]Eveningポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-CG 固体地球科学複合領域・一般

[S-CG62] [EE] 変動帯ダイナミクス

2017年5月23日(火) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (国際展示場 7ホール)

[SCG62-P14] 混合確率分布を用いた応力逆解析法:別府湾周辺の第四紀小断層群への適用

*佐藤 活志1 (1.京都大学大学院理学研究科地球惑星科学専攻)

キーワード:stress tensor inversion, fault-slip analysis, mixture probability distribution

断層の方位による応力逆解析法は地震学や構造地質学の分野で普及している.Hough変換に基づく応力逆解析法(Yamaji et al., 2006,以下Hough法)には,複数の応力を検出でき,不完全な断層データにも適用できる(Sato, 2006)という利点がある.不完全な断層データとは,滑り方向を示す条線が観察できないもの,剪断センス(正断層,逆断層,右横ずれ断層,左横ずれ断層の区別)が不明なものである.Hough法において,地質時代に記録された複数の応力状態を分離して検出する手法は完全には自動化されていない.そこで本研究は,混合確率分布モデルを用いて応力を自動認定する手法を提案する.

応力逆解析に必要な観測データは,断層面の方位と滑り方向(断層スリップデータ)である.断層の滑り方向が剪断応力と平行であるとの仮定に基づけば,1条の断層スリップデータに適合する応力テンソルは,5次元空間(偏差応力空間)の半円弧上の点に相当する(Sato and Yamaji, 2006).Hough法は,多数の断層に対応する半円弧を重ね合わせて偏差応力空間上に適合度の分布を得た後,適合度のピークの位置を最適応力と見なす.適合度の分布が複数のピークを持つならば,複数の応力テンソルが解として得られる.本研究は適合度の分布に混合確率分布を当てはめることで,ピークの認定を自動化した.前述の半円弧は偏差応力空間で異方的な形状を持つので,異方性を持つ確率分布として5次元Kent分布を採用した.また,ピークの数はベイズ情報量基準に基づいて決定した.

本手法のテストとして,人工断層データを解析した.2つの応力に起因する断層群を混合して解析したところ,2つの適合度のピークが正しく検出された.本手法を,大分県別府湾周辺に分布する更新統碩南層群を切る小断層群に適用した.NNE-SSW引張応力とNNW-SSE引張応力の2つが検出された.上位の更新統大分層群からは,NNE-SSW引張応力のみが検出されたことから,本地域において1 Ma頃に引張方向が変化したことが示唆された.また,NNE-SSW引張応力の信頼範囲をブートストラップ法によって決定すると,主応力軸の68%信頼範囲は30°程度であった.

References
Sato, 2006, Tectonophysics, 421, 319-330.
Sato, K. and Yamaji, A., 2006, Journal of Structural Geology, 2006, 28, 957-971.
Yamaji, A., Otsubo, M. and Sato, K., 2006, Journal of Structural Geology, 28, 980-990.