JpGU-AGU Joint Meeting 2017

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[EJ]Eveningポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-CG 固体地球科学複合領域・一般

[S-CG72] [EJ] 地震動・地殻変動・津波データの即時把握・即時解析・即時予測

2017年5月20日(土) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (国際展示場 7ホール)

[SCG72-P03] 光ファイバー網とDASテクノロジーを使ったリアルタイム地震観測の可能性

*木村 恒久1 (1.シュルンベルジェ)

キーワード:DAS、hDVS、光ファイバー、地震、サイズミック、リアルタイム観測

DASテクノロジーは、パイプラインのモニタリングや侵入者を感知するために、2011年頃からから石油・ガス産業で使われている。位相差データを用いる最新の光ファイバーセンシング技術によって、近年、DASシステムを使い、VSPを含む良好なサイズミックデータを記録することができるようになったことは、昨年の発表で紹介した。我々はこのシステムのことを、‘hDVS’と呼んでいる。

hDVSは、通常用いられるジオフォン等の電気・磁気的なセンサーでなく、光ファイバーを振動計測のセンサーとして使う。実際には、光ファイバーの振動に対するダイナミックストレインを計測しており、シングルモードファイバー、マルチモードファイバーの両者に使うことができ、つなげたファイバーの全長、もしくはパラメータで決めた長さだけをセンサーとして使うことができる。

通常の電気・磁気的なセンサーは、1995年の阪神・淡路大震災以降、日本各地に設置され、2011年の東日本大震災後、その観測網が、海底にも広がっている。この日本における地震観測網は、世界一の密度を誇っている。しかし、通常のセンサーは、点としてのデータしか収集することができなく、しかも設置にかかるコストや、センサーの設置環境の制限により、設置される数と場所に限りがある。また、将来起きるであろう巨大地震により、現状の地震観測網の一部が破壊され、必要とされる時、継続した観測が困難になる可能性があることが指摘されている。

hDVSの場合、既存の、主にデータ通信用の目的で設置してある光ファイバーを、線状の地震波測定用のセンサーとして扱うことができ、センサーの設置コストと設置にかかる時間を低く抑える事ができる。IT革命の一環として、日本国内の陸上を初め、米国、アジア諸国との間に光ファイバー網が張り巡らされている。国際海底光ファイバーケーブルは、地震が起き易いプレート同士が重なる領域をまたいで設置してあるので、1台のhDVSを用いることによって、プレートの動きを数十kmの広範囲に渡り、リアルタイムに観測することが可能となる。

光ファイバーの200℃またはそれ以上の高温環境下に耐える特性と、13,000気圧に耐える特性により、地震が発生しやすい地層近くに掘られた深い井戸や火山の近くに設置することが可能で、地震発生地点近くで捉えられた地震波を、光の速さで地上局に伝達するリアルタイムモニタリングが可能となる。

このようにhDVSを使えば、現存する観測網に加え、観測点間のデータが得られない場所を主なターゲットとして、地上、海底、地下を網羅した日本の地震活動を光の速さでモニタリングする包括的なネットワークを、時間と費用を大きくかけずに築くことができるであろう。これによって、近未来に起こると予想されている地殻活動由来の大災害から、より多くの人命を救えることを確信している。