[SCG73-P04] 房総半島南端白間津海岸白浜層中に分布する沸石群について
キーワード:ゼオライト、輝沸石、方沸石、ネコ石、エリオン沸石
諸言 房総半島の南端に位置する野島崎は、 野島崎礫岩層と呼ばれる硬い岩石から構成され るため浸食に強く、特徴的地形がみられる。 本発表では、野島崎に分布するゼオライト岩の 特異な産状を紹介し、成因について議論する。
玄武岩礫:野島崎を形成する硬い礫岩層は、 主に火山岩の岩片から構成されるが、堆積岩、 変成岩も含まれ、岩種は幅広い。特に、この礫 岩に含まれる玄武岩礫は、よく発泡しており、 3mm 程度の泡の空隙をゼオライトが充填して いる。heulandite (輝沸石)、analcime (方沸 石)、natrolite (ソーダ沸石)、thomsonite(ト ムソン沸石)などが肉眼で識別できる。このゼ オライト玄武岩礫は、東京近郊で登山支度なし で簡単に見つけられる含ゼオライト岩である。 玄武岩礫は、野島崎西側の海岸に露出もしくは 打ち上げられており、野島崎灯台遊歩道から簡 単に見つけることができる。 円摩された玄武岩礫中に見られるゼオライト も円摩されており、各ゼオライト形成後に浸食 作用を被ったことが推定される。
Analcime ノジュール:野島崎礫岩のもう一 つの特徴は、径 cm から 60cm に及ぶ泥岩の偽 礫を含むことである。偽礫とは、未固結の泥質 堆積物の上を砂などが流れ下った時に、泥が剥 がされて砂などの中に取り込まれた泥岩のこと で、あたかも礫に偽装しているかのように見え ることから、偽礫と呼ばれる岩石である。野島 崎礫岩中の偽礫は、analcime(方沸石)によっ てセメントされており、この偽礫は、analcime ノジュールのように見える。analcime のみでセ メントされている場合と、analcime と calcite(方解石)でセメントされている場合がある。 また、白色の岩脈(calcite もしくは、calcite+ analcime)で切られる場合と、岩脈の関与がな い場合がある。ノジュール状の analcime は、非常に珍しく、日本で2 例目の報告となる。
Erionite 凝灰岩:野島崎東側では、房総半島 で重要な鍵層である SH 凝灰岩を観察できる。 この凝灰岩は、一部が風化に強いため地層から 浮き上がっている。風化に耐えている部分は、 組成がシリカに富み、erionite(エリオン沸石) によってセメントされている。これが、風化に 強い理由であると考えられる。Erionite 凝灰岩 は、日本では初めての記載となる。
Heulandite(輝沸石)とNekoite(ネコ石)の共存 : 白浜層の重要な鍵層で ある SH 凝灰岩層最下部と SH 凝灰岩層の上位約 6mに二層の軽石層が分布する。この軽石層は変質を被り、輝沸石とネコ石が形成されている。輝沸石は、 粒径 0.2 mm を超え、堆積岩中の輝沸石としては最大級の大きさである。輝沸石の空隙を埋める形でネ コ石の放射状結晶が観察される。 SH 凝灰岩層の上下の白浜層には多数の白色鉱物 脈が見られる。化学分析の結果、軽石中の輝沸石と脈中の輝沸石は若干異なる組成を示した。脈中の輝沸石は、鏡下におおて光学異常(異常消光)が認められた。光学異常を示した輝沸石は、化学分析においてカチオンが著しく 不足した。どちらの輝沸石も 450℃8 時間で X 線的に完全に消滅する。ネコ石は、スカルンや石灰岩の 風化鉱物であり、続成作用で形成された例はない。
玄武岩礫:野島崎を形成する硬い礫岩層は、 主に火山岩の岩片から構成されるが、堆積岩、 変成岩も含まれ、岩種は幅広い。特に、この礫 岩に含まれる玄武岩礫は、よく発泡しており、 3mm 程度の泡の空隙をゼオライトが充填して いる。heulandite (輝沸石)、analcime (方沸 石)、natrolite (ソーダ沸石)、thomsonite(ト ムソン沸石)などが肉眼で識別できる。このゼ オライト玄武岩礫は、東京近郊で登山支度なし で簡単に見つけられる含ゼオライト岩である。 玄武岩礫は、野島崎西側の海岸に露出もしくは 打ち上げられており、野島崎灯台遊歩道から簡 単に見つけることができる。 円摩された玄武岩礫中に見られるゼオライト も円摩されており、各ゼオライト形成後に浸食 作用を被ったことが推定される。
Analcime ノジュール:野島崎礫岩のもう一 つの特徴は、径 cm から 60cm に及ぶ泥岩の偽 礫を含むことである。偽礫とは、未固結の泥質 堆積物の上を砂などが流れ下った時に、泥が剥 がされて砂などの中に取り込まれた泥岩のこと で、あたかも礫に偽装しているかのように見え ることから、偽礫と呼ばれる岩石である。野島 崎礫岩中の偽礫は、analcime(方沸石)によっ てセメントされており、この偽礫は、analcime ノジュールのように見える。analcime のみでセ メントされている場合と、analcime と calcite(方解石)でセメントされている場合がある。 また、白色の岩脈(calcite もしくは、calcite+ analcime)で切られる場合と、岩脈の関与がな い場合がある。ノジュール状の analcime は、非常に珍しく、日本で2 例目の報告となる。
Erionite 凝灰岩:野島崎東側では、房総半島 で重要な鍵層である SH 凝灰岩を観察できる。 この凝灰岩は、一部が風化に強いため地層から 浮き上がっている。風化に耐えている部分は、 組成がシリカに富み、erionite(エリオン沸石) によってセメントされている。これが、風化に 強い理由であると考えられる。Erionite 凝灰岩 は、日本では初めての記載となる。
Heulandite(輝沸石)とNekoite(ネコ石)の共存 : 白浜層の重要な鍵層で ある SH 凝灰岩層最下部と SH 凝灰岩層の上位約 6mに二層の軽石層が分布する。この軽石層は変質を被り、輝沸石とネコ石が形成されている。輝沸石は、 粒径 0.2 mm を超え、堆積岩中の輝沸石としては最大級の大きさである。輝沸石の空隙を埋める形でネ コ石の放射状結晶が観察される。 SH 凝灰岩層の上下の白浜層には多数の白色鉱物 脈が見られる。化学分析の結果、軽石中の輝沸石と脈中の輝沸石は若干異なる組成を示した。脈中の輝沸石は、鏡下におおて光学異常(異常消光)が認められた。光学異常を示した輝沸石は、化学分析においてカチオンが著しく 不足した。どちらの輝沸石も 450℃8 時間で X 線的に完全に消滅する。ネコ石は、スカルンや石灰岩の 風化鉱物であり、続成作用で形成された例はない。