JpGU-AGU Joint Meeting 2017

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[JJ]Eveningポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-CG 固体地球科学複合領域・一般

[S-CG73] [JJ] 岩石・鉱物・資源

2017年5月22日(月) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (国際展示場 7ホール)

[SCG73-P11] 北部九州西部,能古島西海岸に分布する花崗閃緑斑岩の産状と化学組成

*柚原 雅樹1 (1.福岡大学理学部地球圏科学科)

キーワード:花崗閃緑斑岩、北崎トーナル岩、能古島、北部九州白亜紀花崗岩類

北部九州白亜紀花崗岩類分布域の東部に位置する能古島の北半部には,北崎トーナル岩が分布し,その南側の変成岩中には花崗閃緑斑岩岩脈が貫入している.これらの花崗閃緑斑岩は,肉眼的特徴から北崎トーナル岩と同じグループであると考えられている(唐木田,1965;唐木田ほか,1994).新たに行った岩石学的,岩石化学的検討により,それとは異なる可能性が示唆されたため,本報告では,岩脈の産状,記載岩石学的特徴ならびに全岩化学組成の特徴について述べ,マグマの成因について考察を行う.
花崗閃緑斑岩岩脈は,能古島西海岸の変成岩中に認められ,厚さ最大12mで,NNEあるいはENE方向に高角度に貫入している.現在,3岩脈を確認している.塊状で斑状の花崗閃緑斑岩からなり,最大長径120cmの苦鉄質包有岩を多量に包有する.本花崗閃緑斑岩は,主に斜長石,普通角閃石,黒雲母,石英,カリ長石からなり,副成分鉱物として燐灰石,チタン石,ジルコン,不透明鉱物を含む.斑晶は斜長石,普通角閃石,黒雲母,石英からなる.石英斑晶は融食形を示し,斜長石斑晶には汚濁帯が認められる.普通角閃石と黒雲母斑晶の周囲は複雑に入り組んでいる.苦鉄質包有岩は,主に斜長石,普通角閃石,黒雲母,少量の石英からなり,副成分鉱物として燐灰石,チタン石,ジルコン,不透明鉱物を含む.斑晶は斜長石,普通角閃石,黒雲母と少量の石英からなる.石英斑晶は融食形を示し,反応縁が認められる場合がある.斜長石斑晶には汚濁帯が認められる.これらの斑晶の産状は,マグマ混合を示唆する.
花崗閃緑斑岩と苦鉄質包有岩のSiO2含有量は,それぞれ66.4wt.%~68.4wt.%,60.4~61.3wt.%である.ハーカー図において,本花崗閃緑斑岩は,苦鉄質包有岩と北崎トーナル岩中に貫入する普通角閃石-黒雲母花崗斑岩岩脈(柚原ほか,2007)の間の組成を示す.苦鉄質包有岩は多くの元素で北崎トーナル岩の組成範囲内にあるが,MgO,Na2O,Crに富み,Yにやや乏しい傾向にある.特に,SiO2-A.S.I.図やMgO-Fe2O3*図では,花崗斑岩,花崗閃緑斑岩,苦鉄質包有岩の形成するトレンドと,北崎トーナル岩の変化トレンドは大きく異なる.以上のことから,花崗閃緑斑岩は,花崗斑岩マグマと苦鉄質包有岩の元となったマグマ(北崎トーナル岩とは異なる組成を持つ)の混合により形成されたと考えられる.