[SCG73-P14] 北部フォッサマグナ,米山地域に分布する後期新生代TH系列火成岩の岩石学的研究
キーワード:北部フォッサマグナ、ソレアイト系列、含水量、角閃石
北部フォッサマグナ地域北東部の日本海沿岸に位置する米山地域には,後期鮮新世〜前期更新世の米山層火山岩類が分布し,しばしば角閃石斑れい岩質捕獲岩や角閃石巨晶が見られる.本火山岩類は,斑晶鉱物組み合わせの特徴から,Ol-Cpx玄武岩〜玄武岩質安山岩,Cpx玄武岩〜安山岩,Cpx-Opx玄武岩〜安山岩,Cpx-Hbl±Opx玄武岩質安山岩〜安山岩に区分される.米山層火山岩を貫く中ノ岳貫入岩体は,南北1.6 km,東西1 kmの岩体であり,中心部はCpx-Opx斑れい岩,周縁部はHbl安山岩からなる複合岩体である.本斑れい岩中には閃長岩質細脈が見られる.
本層火山岩類の岩石学的特徴は,Gill(1981)の中間〜高K系列に属し,Miyashiro(1974)のソレアイト(TH)系列が卓越し,一部カルクアルカリ(CA)系列にプロットされる.各種主成分・微量成分元素のハーカー図から,一連の結晶分化トレンドを示しており,安山岩組成では角閃石の分別作用が顕著であったと考えられる.このことは,希土類元素比(Dy/Yb比)が,SiO2含有量の増加に伴い減少することからも支持される.斑晶鉱物を用いた輝石温度計(Wells, 1977)の結果は,玄武岩が約1100℃,安山岩が約1050℃を示す.Ernst and Liu(1998)による角閃石圧力計の結果は,角閃石斑晶が最大1.5 GPaの下部地殻の深度において晶出したことを示す.これらの温度・圧力条件を用いて,Hamada and Fujii(2007)による斜長石−メルト含水量計を計算すると,含水量は角閃石を含む玄武岩で約3 wt%,Hbl安山岩で約3〜4 wt%,中ノ岳貫入岩体の斑れい岩で約3〜4 wt%の高含水量を示した.以上から,TH系列が卓越する本層火山岩類は,高含水量マグマに由来したと考えられる.島弧ソレアイト質玄武岩の溶融実験を行ったHamada and Fujii(2008)は, 3.0 〜4.4 wt%の水を加えた実験でTH系列マグマが生成されることを報告しており,それと同様な生成条件であったと考えられる.一方,本火山岩類の87Sr/86Sr比は,SiO2含有量の増加に伴いやや高くなる傾向があり,中ノ岳貫入岩体の閃長岩質細脈は最も高い87Sr/86Sr比(>0.7042)を示すことから,地殻物質の関与を考慮する必要がある.
本層火山岩類の岩石学的特徴は,Gill(1981)の中間〜高K系列に属し,Miyashiro(1974)のソレアイト(TH)系列が卓越し,一部カルクアルカリ(CA)系列にプロットされる.各種主成分・微量成分元素のハーカー図から,一連の結晶分化トレンドを示しており,安山岩組成では角閃石の分別作用が顕著であったと考えられる.このことは,希土類元素比(Dy/Yb比)が,SiO2含有量の増加に伴い減少することからも支持される.斑晶鉱物を用いた輝石温度計(Wells, 1977)の結果は,玄武岩が約1100℃,安山岩が約1050℃を示す.Ernst and Liu(1998)による角閃石圧力計の結果は,角閃石斑晶が最大1.5 GPaの下部地殻の深度において晶出したことを示す.これらの温度・圧力条件を用いて,Hamada and Fujii(2007)による斜長石−メルト含水量計を計算すると,含水量は角閃石を含む玄武岩で約3 wt%,Hbl安山岩で約3〜4 wt%,中ノ岳貫入岩体の斑れい岩で約3〜4 wt%の高含水量を示した.以上から,TH系列が卓越する本層火山岩類は,高含水量マグマに由来したと考えられる.島弧ソレアイト質玄武岩の溶融実験を行ったHamada and Fujii(2008)は, 3.0 〜4.4 wt%の水を加えた実験でTH系列マグマが生成されることを報告しており,それと同様な生成条件であったと考えられる.一方,本火山岩類の87Sr/86Sr比は,SiO2含有量の増加に伴いやや高くなる傾向があり,中ノ岳貫入岩体の閃長岩質細脈は最も高い87Sr/86Sr比(>0.7042)を示すことから,地殻物質の関与を考慮する必要がある.