JpGU-AGU Joint Meeting 2017

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[JJ]Eveningポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-CG 固体地球科学複合領域・一般

[S-CG74] [JJ] 地球惑星科学におけるレオロジーと破壊・摩擦の物理

2017年5月22日(月) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (国際展示場 7ホール)

[SCG74-P07] クラックを含む花崗岩の剪断変形中の弾性波速度のモニタリング

*久保 達郎1並木 敦子2片山 郁夫1 (1.広島大学大学院理学研究科地球惑星システム学専攻、2.広島大学総合科学研究科環境自然科学講座)

キーワード:弾性波速度、摩擦実験、クラックを含む花崗岩、地震の評価

[はじめに] 断層帯の力学的な破壊プロセスを理解するひとつの可能性として, これまで弾性波速度の変化が注目されている。弾性波速度はクラックの形成と閉鎖に強く依存するため, 三軸圧縮試験においても差応力の上昇によるクラックの閉鎖や成長に伴い, 弾性波速度の上昇が観察されている(Scholz et al. 1973)。また, 天然の断層帯においてもLanders地震(1992)のあとで断層帯のP波, S波速度が増加しているなどの報告もある(Li et al. 1998)。地震の発生サイクルの中で弾性波速度の変化から断層帯における応力状態や固着に関する情報を得ることは,地震の予兆現象の観測に繋がると期待されることからも,極めて重要な課題といえる。そこで本研究では剪断応力のかかった環境下における弾性波速度の変化を観察し, 断層面ですべり現象が生じている最中での弾性波速度の応答をモニタリングすることを試みた。

[実験手法] 二軸摩擦試験機を用いて剪断試験を行なっている最中の弾性波速度のモニタリングを行った。垂直応力は油圧式手押しポンプで制御しながら加重をかけていき5, 10, 20 MPaに制御した。鉛直方向(剪断方向)の加重はモーターとギアシステムを用いており, ギアシステムにより様々な速度比で減速された回転運動を, ボールネジを用いて鉛直方向の往復運動に変換することで載荷した。天然の断層帯では母岩にも割れ目が多く発達することが期待されるため, 試料に用いたサンプルは庵治花崗岩を600℃で4時間の加熱処理を行い, 熱亀裂を加えたサンプル間での剪断すべり実験を行った。弾性波速度測定では, 摩擦面に垂直な方向でサンプルに直接圧電素子をはりつけた。入力波としては周波数1 MHzのバースト波を用い, 断層面を含めサンプルを通過した波をオシロスコープで解析した。弾性波速度は試料の長さと伝搬時間より算出した。

[結果と考察] 試料である花崗岩ブロックを通過する弾性波の速度は垂直応力の増加に伴い上昇した。これは試料中の垂直応力に直行する面方向に配列するクラックの閉鎖が原因であると考えられる。剪断変形を開始すると,弾性波速度は剪断応力の増加に伴い系統的に上昇した。これは主に剪断方向に直行する面方向のクラックが閉鎖することによる変化であると考えられる。また,剪断応力が定常状態に達すると,弾性波速度の変化はみられなくなった。透過波の波形から振幅の変化を観察したところ, 振幅は垂直応力ならびに剪断応力の増加にともない増える傾向がみられたが,剪断応力が定常状態に達すると,速度と同様にほぼ一定の値を示した。これらのことは, 地震発生サイクルの中で応力が蓄積されるインターサイスミックな期間において, 断層帯周辺を通過する地震波の速度や振幅の変化を追うことで,すべりの準備過程を知るひとつの要素となりうる可能性を示していると考えられる。