[SEM20-P09] 粘性岩石磁化を用いた那智勝浦町における土石流堆積物の定置年代の推定
キーワード:花崗斑岩、熱消磁、粘性磁化
土石流の発生年代を明らかにしてその周期性を解明することは,土砂災害の防災の観点から極めて重要である.本研究では,和歌山県那智勝浦町の花崗斑岩を基盤岩とする山地において,過去の土石流堆積物から採取された礫が保有する粘性残留磁化(VRM)の段階熱消磁過程を計測することで年代を推定することを試みた.VRMは温度と時間の関数として表現できることが知られおり(Pullaiah et al., 1975),例えばSato et al. (2014)はVRMを用いて石垣島に分布する津波石の定置年代の推定に成功している.この土石流堆積物は,那智川の支流の1つである金山谷において,2011年台風12号による豪雨災害により露出した.堆積物中から採取された木片試料の14C年代は3,650±30 yBP(2,057-1,943 calBC, 2σ;西山・若月,2014)であり,堆積年代を示していると考えられる.この木片試料の付近にある花崗斑岩礫を採取して,一辺2.23 cmの立方体の供試体を作成した.立方体に整形することで,熱消磁ステップ毎の磁力計による繰り返し測定の角度誤差を最低限に抑えることが狙いである.そして,加熱に伴う供試体内部の複数ポイントの温度変化を計測することで,熱消磁実験での加熱時間と熱消磁炉内における供試体の最適な配置方法を検討した.熱消磁に先立って,多磁区粒子の影響を抑えるために低温消磁を行った.その後,5°C間隔で段階熱消磁を行い,残留磁化ベクトル曲線と方位曲線の屈曲部の温度を判定することで,試料が露頭で獲得したVRMが消磁される温度を計測した.発表では,これらの結果から粘性残留磁化の時間-温度理論曲線を用いて推定定置年代の報告を行う予定である.