[SGL34-P04] 熊野海盆泥火山における活動拘条件を探る
キーワード:mud volcano, plate convergent margin, mud intrusion/dirpir
泥火山は、マグマを噴出する火山とは異なり、地下深部に静置される堆積物が地表に至って形成する地形的特徴である。地下の性状を地表に伝える可能性がある泥火山は、世界中からその存在が報告されている(Kopf et al., 2002)。特に油田地帯や、堆積物の供給が多い河川流入口やプレート収束境界に分布がある。このことは泥火山の形成が、何か外部からの大きな圧力が定常的に掛かり、かつ噴出する材料を充分に供給する機構を必要とすることを示唆する。泥火山からは、堆積物や流体(ガス、水、油、溶存塩)が、噴出する或いは流れ出す(Milkov, 2005)。泥火山から排出される堆積物と流体が、地下深部から地表に至る理由は、それらが地下にあって浮力を獲得したからに他ならない。地下に静置されている物質が浮力を獲得する理由としては、熱を持つこと(火山性)や密度差が生じること(堆積物の脱水・脱ガス、マントルウェッジにおける加水による蛇紋岩化など)が考えられる。さらに物質の上昇が浮力依存だけでなく、断層など地下に存在する弱線を利用する例もあることを考慮する必要がある。泥火山研究についてはその定義が「『泥』による『地形的特徴』」でしかないために、対象となる事象を支える地質学的背景が多様性に富み、結果として「泥火山活動」を概観することが困難な状況にあると思われる。私たちが、少なくとも我が日本国の周辺に存在する泥火山活動を把握し、地下の物質と性状を私たちに伝えるものとして利活用するためには、日本周辺とそれに類似する地質環境に対象を絞った泥火山活動の観察と考察が求められる。
日本列島はプレート収束境界にある。陸上各所から泥火山や泥噴出活動が報告され(新潟県十日町市、北海道新冠町、各地泥温泉など)、海洋環境下にある熊野海盆においては既に14の泥火山が群生していることが確認されている(Kuramoto et al., 1998, 2001; Morita et al., 2004; Pape et al., 2014; Asada et al., submitted)。フィリピン海プレートがユーラシアプレートに沈み込み形成する熊野海盆の付加体は、プレート境界から海底面へ続く巨大断層で切られている(Moore et al., 2009; Kimura et al., 2011)。熊野海盆に知られる泥火山から採取された流体の一部は、プレート境界沿いに最大15kmもの深さからもたさらされた可能性が示唆されている(Nishio et al., 2015)。熊野海盆北部の地震波探査記録は泥火山の下に大規模なダイアピルが存在することを示唆する(Morita et al., 2004; Moore et al., in this session)。熊野海盆外縁隆起帯に近年確認された泥火山(Asada et al., submitted; Walter et al., in this session)は北部同様に大規模な泥ダイアピルによる地形的高まりを至近に擁すると考えている。この泥火山はしかし、噴出の最終段階には既存断層に沿う物質移動があった可能性がある(Asada et al., submitted)。これら熊野海盆における泥火山形成の条件を概観すると、①泥火山起源としては海洋プレート付加によりもたらされた物質が見込まれ、②堆積層下部における流体が滞留しやすい環境が泥ダイアピルの存否とおよその泥火山分布を決め、③表層付近の断層など構造的弱線の存在が泥火山活動を規制する、という可能性を考える。他の海域泥火山研究からも同様の情報を集積し比較検討することで、熊野海域の特徴を洗い出したい。同時に熊野海盆泥火山を構成する物質の起源深度、活動度や頻度、地域毎の差異などについて情報を集めつつ、日本近海にまだ未発見の泥火山群が存在する可能性を、熊野海域の特徴を基盤にして海域を拡張して考えたい。さらには日本周辺泥火山と地震活動の関係に考察を拡げたい。
日本列島はプレート収束境界にある。陸上各所から泥火山や泥噴出活動が報告され(新潟県十日町市、北海道新冠町、各地泥温泉など)、海洋環境下にある熊野海盆においては既に14の泥火山が群生していることが確認されている(Kuramoto et al., 1998, 2001; Morita et al., 2004; Pape et al., 2014; Asada et al., submitted)。フィリピン海プレートがユーラシアプレートに沈み込み形成する熊野海盆の付加体は、プレート境界から海底面へ続く巨大断層で切られている(Moore et al., 2009; Kimura et al., 2011)。熊野海盆に知られる泥火山から採取された流体の一部は、プレート境界沿いに最大15kmもの深さからもたさらされた可能性が示唆されている(Nishio et al., 2015)。熊野海盆北部の地震波探査記録は泥火山の下に大規模なダイアピルが存在することを示唆する(Morita et al., 2004; Moore et al., in this session)。熊野海盆外縁隆起帯に近年確認された泥火山(Asada et al., submitted; Walter et al., in this session)は北部同様に大規模な泥ダイアピルによる地形的高まりを至近に擁すると考えている。この泥火山はしかし、噴出の最終段階には既存断層に沿う物質移動があった可能性がある(Asada et al., submitted)。これら熊野海盆における泥火山形成の条件を概観すると、①泥火山起源としては海洋プレート付加によりもたらされた物質が見込まれ、②堆積層下部における流体が滞留しやすい環境が泥ダイアピルの存否とおよその泥火山分布を決め、③表層付近の断層など構造的弱線の存在が泥火山活動を規制する、という可能性を考える。他の海域泥火山研究からも同様の情報を集積し比較検討することで、熊野海域の特徴を洗い出したい。同時に熊野海盆泥火山を構成する物質の起源深度、活動度や頻度、地域毎の差異などについて情報を集めつつ、日本近海にまだ未発見の泥火山群が存在する可能性を、熊野海域の特徴を基盤にして海域を拡張して考えたい。さらには日本周辺泥火山と地震活動の関係に考察を拡げたい。