JpGU-AGU Joint Meeting 2017

講演情報

[JJ]Eveningポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-GL 地質学

[S-GL36] [JJ] 地域地質と構造発達史

2017年5月22日(月) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (国際展示場 7ホール)

[SGL36-P01] 高分解能反射法音波探査データから推察する上総海盆の発達過程

*古山 精史朗1佐藤 智之1 (1.産業技術総合研究所)

キーワード:反射法音波探査、上総層群、テクトニクス

房総半島中部に分布する上総層群は,鮮新世後期から更新世前期にかけて海盆底から沿岸域に至る環境で堆積した地層で構成されており,その最大層厚は3000 m以上である (Ito and Katsura, 1992).上総層群が堆積した前弧海盆は「上総海盆」と呼ばれ(渡部ほか,1987),時代とともに北西へ移動したと考えられているが (三梨,1990),その具体的な要因についてはあまり議論されていない.そこで本研究では房総半島東部沿岸域で取得した高分解能反射法音波探査データに基づき,上総海盆北西移動の構造地質学的背景について考察する.
本研究の調査海域は九十九里浜沖合の北緯35度10分〜35度50分, 東経140度20分〜141度10分の範囲(九十九里沖)で, 総測線長は約1,100 kmである.調査は小型船に搭載した発振装置ブーマーを音源として使用し,高分解能反射法音波探査を行った.受波用のストリーマーケーブルのチャネル数は24で, チャネル間隔は3.125 mである. データはParallel Geoscience Corporation社のデータ解析ソフトSPWを用いて処理を行い,海底下100 m程度の反射断面を得た.
九十九里沖では明瞭な不整合が認められ,この不整合を境に九十九里沖の地層を,上位から九十九里沖A層,九十九里沖B層,九十九里沖C層と層序区分した.これらのうち九十九里沖に最も広く分布する九十九里沖B層は,石灰質ナンノ化石 (西田ほか,2016) から上総層群に対比されることがわかった.この九十九里沖B層中には,陸棚縁付近でおおよそ南北走向の背斜構造が,茂原市から太東崎の沖合で東落ちの南北性正断層群がそれぞれ認められる.これらの地質構造により九十九里沖B層は,成層した地層が明瞭に傾斜または変形する音響的層相を示す.また海域の正断層群は,上総層群に発達する正断層の特徴とよく一致する.これらの正断層群の一部は西落ちとなっており,これにより九十九里町の沖合ではグラーベンが発達する.
本研究から,九十九里沖は圧縮応力場で形成される背斜構造と引張応力場で形成されるグラーベンが近接する複雑なテクトニクスの場であったことが明らかになった.この背斜構造が外縁隆起帯として機能したことにより,上総海盆は北西へ移動したと考えられる.