JpGU-AGU Joint Meeting 2017

講演情報

[JJ]Eveningポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-GL 地質学

[S-GL37] [JJ] 地球年代学・同位体地球科学

2017年5月25日(木) 15:30 〜 16:45 ポスター会場 (国際展示場 7ホール)

[SGL37-P01] 山地の隆起・削剥史と低温領域の熱年代学

★招待講演

*末岡 茂1 (1.日本原子力研究開発機構)

キーワード:隆起、削剥、低温領域の熱年代学

熱年代学は放射年代学の一分野で,加熱による娘核種の拡散で見かけ年代が若返る現象を利用して,熱イベントの時期や到達温度などを推定する学問領域である.これを,地下深部の高温領域で形成された岩石(例えば花崗岩)に適用すれば,その地域の削剥史を復元することができる.特に,フィッション・トラック法や(U-Th)/He法など,比較的低温で年代の若返りが起こる手法(低温領域の熱年代学)は,地表から数km以内の地殻浅部における削剥史の推定に有効である.このような研究は,スイスアルプスの事例(Wagner et al., 1977, Mem. Instit. Geol. Mn. Univ. Padova)を皮切りに,世界各地の様々な変動帯(大陸衝突帯,受動的大陸縁,楯状地,堆積盆,陸弧,島弧など)に適用されてきた(例えば,Herman et al., 2013, Natureのコンパイル参照).いまや,本手法は変動地形学や構造地質学などの分野で,不可欠な手法のひとつであると言える.しかし,本手法を有効に用いるためには,冷却,削剥,隆起という複数のプロセスを段階的に考慮する必要があり,放射年代学の知識に加えて,地下の熱構造,地殻浅部における変形メカニズム,地表における削剥過程などに対する理解もしばしば要求される.特に削剥については,関わった物質は運搬・溶解などにより原位置から損なわれてしまうこともあり,直感的にイメージするのが困難だと思われる(実際,熱年代学の黎明期~成長期にあたる1970年代から1990年代頃では,査読付きの国際論文においても,しばしば隆起と削剥の混乱・誤用が見られる).本発表では,熱年代にあまり詳しくない方々にも本手法の理解を深めてもらうことを第一の目的として,熱年代学の基礎から山地への応用に関する基礎的な概念や用語の整理を行う.加えて,フィッション・トラック法と(U-Th)/He法を中心に,日本列島の山地における適用例や,既存データのコンパイル結果なども紹介する予定である.