JpGU-AGU Joint Meeting 2017

講演情報

[EE]Eveningポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-IT 地球内部科学・地球惑星テクトニクス

[S-IT22] [EE] 核-マントルの相互作用と共進化

2017年5月21日(日) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (国際展示場 7ホール)

[SIT22-P02] 核の圧力までの変形実験を目指した回転ダイアモンドアンビルセルの開発

*東 真太郎1野村 龍一2中島 悠貴3上杉 健太朗4新名 亨2入舩 徹男2 (1.九州大学 大学院理学研究院 地球惑星科学部門、2.愛媛大学 地球深部ダイナミクス研究センター、3.東京工業大学、4.公益財団法人高輝度光科学研究センター)

キーワード:変形実験、ダイアモンドアンビルセル、下部マントル、核

近年の高圧実験装置の開発はめざましく、今ではダイアモンドアンビルセル(DAC)によって地球の内核の圧力(~360GPa)まで再現できるに至った(Tateno et al., 2010)。その一方で、変形実験に特化した装置については技術的困難により再現できる圧力は限定的である。地球内部とその進化は動的過程によって支配されており,それを理解するためには超高圧下での変形実験から鉱物のレオロジー特性を明らかにすることが必要不可欠である。それゆえ変形実験装置が再現できる圧力範囲を拡大することは我々の地球深部ダイナミクスの理解を大きく前進させてくれることが期待される。そこで本研究の目的は、内核までの圧力を再現でき、大歪の変形実験を実現できる回転ダイアモンドアンビルセル(R-DAC)を開発し、実用化することである。
 本研究では既存のダイアモンドアンビルセルを改良し、超高圧下においてねじり変形をサンプルに与えられるようにした。この改良されたR-DACでは、下部アンビルは固定し、上部アンビルが回転する。この回転する上部アンビルは開発した回転DAC専用のギアボックス(made by PRETECH)に取り付けられ、定速度(10-6–10-3 rpm)で回転する。テスト実験としてサンプルには下部マントルを構成しているPericlase(MgO)の(1相)とBridgmanite((Mg,Fe)SiO3)とFerropericlase((Mg,Fe)O)のmixture (2相)を用いて変形実験を行った。これらのサンプルはFIBによって溝を作り、溝の側面にPtを蒸着することでStrain markerとする。変形実験後は回収試料のStrain markerを観察し歪を決定できる。実験条件として温度は室温、圧力35–150 GPa、歪速度5.6×10-5–1.7×10-4 s-1である。さらに本実験はSPring-8において、新しく開発された技術であるX線ラミノグラフィー(Nomura and Uesugi, 2016)と組み合わせることでStrain markerのその場観察も行い、実験中の歪と歪速度を評価した。
 Strain markerの評価によって せん断歪に対する圧縮軸方向の歪の影響を評価したところ、最大でも10%以下であり、ほぼsimple shear(or general shear)を実現できていると考えられる。本実験はねじり変形であるため、サンプル内の歪分布は一様ではない。回転軸からの距離が増加するにしたがって、歪は大きくなる。上部アンビルを80–120º回した場合、歪が最も大きいところで~4–10に達する。しかし上部アンビルの回転角度から予想されるサンプルの歪、歪速度と実際のサンプルのStrain markerから決定されたそれらとは差があることから、上部アンビルとサンプルの間でスリップが起きていることが予想される。それゆえ、歪、歪速度をその場観察できるX線ラミノグラフィーとR-DACの組み合わせは非常に有用であると言える。回収された試料についてはFE-SEMによって観察した。その結果、BridgmaniteとFerropericlase2相系での変形実験では、Ferropericlaeが大きく変形し、連結した微細組織が観察された。本発表では開発、改良されたR-DACによってメガバールの圧力下において行われた変形実験の結果とR-DACの実用性について予察的ではあるが報告を行う。