[SSS04-P15] 熊野沖南海トラフにおける三次元地震探査データの最新解析結果
キーワード:Nankai Trough seismogenic zone , 3D seismic survey
熊野沖南海トラフでは、国際深海科学掘削計画(IODP)プロジェクトとして、地球深部探査船「ちきゅう」による地震発生帯深部掘削計画が継続されている。その事前調査として2006年に取得された三次元地震探査データは、巨大分岐断層や前縁部スラスト帯の三次元的構造を明らかにし、南海トラフ付加体形成の理解に大きく貢献した。しかし、この地域の複雑な地質構造に対しては、当時の最新技術では多重反射波やノイズに対する信号比や深部の空間分解能を十分に上げられず、熊野海盆下の付加体内部の詳細構造はいまだ明らかではなかった。そこで、2006年から10年の間には、海中多重反射波あるいは各種ノイズの除去処理、速度異方性を考慮した深度イメージング技術など、格段の進歩を遂げてきた三次元地震探査データの解析技術を用いてデータ再処理を実施し、速度モデルの再構築と深度イメージングを行った。
取得データの大きな問題は、掘削対象とする深度約5,000m以深の構造からの信号を被覆する海中多重反射波と、流速4−4.5knotにおよぶ黒潮による受振ケーブルのフェザリングの影響であった。海中多重反射波および波浪やフェザリングに伴うノイズに対して、複数の処理手法を最適に組み合わせて適用することで効果的に除去するに成功した。ケーブルフェザリングによる重合数の不均一は反射波イメージを劣化させるので、この課題に対しては、四次元トレース内挿による重合数の規格化とノイズ抑制が図られた。そして、近年の技術革新の一つであるゴースト除去処理を含む信号の広帯域化は、低周波帯域のシグナル強調、波形の先鋭化による浅部の高分解能化に寄与した。このような最新のデータ処理を行ったのち、新たにTTI異方性を考慮した深度領域の速度モデル構築と重合前深度マイグレーションが行われた。速度モデル構築は、ビームマイグレーションを用いた反射波トモグラフィにより、データに依拠する速度モデルの更新が行われた。
新たに得られた高分解能な反射波イメージによって、前縁部スラスト帯では主逆断層の形成に伴う微細な変形構造が、ノッチの浅部では堆積構造と急傾斜な正断層の存在が明らかである。また、熊野海盆下の付加体内部は、異方性深度マイグレーションにより複雑な断層褶曲構造からの反射波はより正確な位置へイメージングされたと期待される。海中多重反射波が効果的に抑制された分岐断層の上盤側には、深部の地層境界の存在を示唆する反射波群が確認される。また、分岐断層の海側延伸部には、下盤側へ派生した反射波群も確認できる。分岐断層は既存解析に比べて下方へ凸に湾曲した形状を示し、その上部には1.5〜2.0km厚さの最大値が5,000m/sを超える高速度帯の存在が示唆されている。ただし、ストリーマ長(4.5km)を超える深度域であるため、異なる仕様の地震探査記録も併用しながら、今後の詳細な評価が必要であると考える。再解析により新たに得られた三次元データボリュームは、変形構造や物性に関する詳細な解析を行うことで、南海トラフプレート沈み込みに伴う付加体内部構造の解明、「ちきゅう」による地震発生帯深部掘削の成功に大きく貢献する。
取得データの大きな問題は、掘削対象とする深度約5,000m以深の構造からの信号を被覆する海中多重反射波と、流速4−4.5knotにおよぶ黒潮による受振ケーブルのフェザリングの影響であった。海中多重反射波および波浪やフェザリングに伴うノイズに対して、複数の処理手法を最適に組み合わせて適用することで効果的に除去するに成功した。ケーブルフェザリングによる重合数の不均一は反射波イメージを劣化させるので、この課題に対しては、四次元トレース内挿による重合数の規格化とノイズ抑制が図られた。そして、近年の技術革新の一つであるゴースト除去処理を含む信号の広帯域化は、低周波帯域のシグナル強調、波形の先鋭化による浅部の高分解能化に寄与した。このような最新のデータ処理を行ったのち、新たにTTI異方性を考慮した深度領域の速度モデル構築と重合前深度マイグレーションが行われた。速度モデル構築は、ビームマイグレーションを用いた反射波トモグラフィにより、データに依拠する速度モデルの更新が行われた。
新たに得られた高分解能な反射波イメージによって、前縁部スラスト帯では主逆断層の形成に伴う微細な変形構造が、ノッチの浅部では堆積構造と急傾斜な正断層の存在が明らかである。また、熊野海盆下の付加体内部は、異方性深度マイグレーションにより複雑な断層褶曲構造からの反射波はより正確な位置へイメージングされたと期待される。海中多重反射波が効果的に抑制された分岐断層の上盤側には、深部の地層境界の存在を示唆する反射波群が確認される。また、分岐断層の海側延伸部には、下盤側へ派生した反射波群も確認できる。分岐断層は既存解析に比べて下方へ凸に湾曲した形状を示し、その上部には1.5〜2.0km厚さの最大値が5,000m/sを超える高速度帯の存在が示唆されている。ただし、ストリーマ長(4.5km)を超える深度域であるため、異なる仕様の地震探査記録も併用しながら、今後の詳細な評価が必要であると考える。再解析により新たに得られた三次元データボリュームは、変形構造や物性に関する詳細な解析を行うことで、南海トラフプレート沈み込みに伴う付加体内部構造の解明、「ちきゅう」による地震発生帯深部掘削の成功に大きく貢献する。