[SSS10-P11] 時間変化を含めた日本のブロック断層モデリング
キーワード:ブロック断層モデル、プレート間カップリング、スロースリップ
要旨
時間変化を含めた日本のブロック断層モデリングを行った。その結果、東北地方太平洋沖地震前のデータから、2003年十勝沖地震のアフタースリップ、2005年の宮城県沖の地震による宮城県沖での太平洋プレートと陸側プレート間の固着の弱化、2008年の茨城県沖、福島県沖の地震後の福島、茨城沖での太平洋プレートと陸側プレート間の固着の弱化が推定された。フィリイピン海プレートにおいては、豊後水道のスロースリップ、九州東岸のスロースリップ、東海のスロースリップが検出された。東北地方太平洋沖地震後の解析では、豊後水道のスロースリップ、九州東岸のスロースリップ、紀伊水道のスロースリップが推定された。九州東岸のスロースリップは、矢来&宗包(2015)、西村&越智(2015)によってはじめて発見されているが、本解析でも捉えられることが示された。また、紀伊水道のスロースリップでは、紀伊半島沖でプレート間の固着が次第に小さくなっていく様子が捉えられた。以上の結果から、定常状態を仮定しなくても、ある程度遷移的な事象を本解析手法で捉えられることがわかった。
はじめに
日本付近の沈み込み帯のプレート間カップリングを精度よく求めることは、将来の海溝型大地震の発生の場所・規模を推定する上で大変重要である。特に西南日本の駿河・南海トラフ沿いで発生する東海・南海地震は比較的高い発生確率が推定されている。このような中、日本のプレート間カップリングの研究が数多く行われてきた。しかしながら、これまでの研究では、マイクロプレートの運動を取り入れて、時間変化まで含めたモデル化はあまり行われていない。ここでは、時間変化まで含めたブロック断層モデリング手法を開発し、日本全国に適用してみた。
解析手法
日本地域のブロック断層モデルは、橋本他(200)によってGNSSの観測結果から行われている。本研究では、橋本他(2000)のブロックモデルの形状を使用して日本のブロックモデルを構築した。即ち、内陸では、橋本他(2000)の矩形断層をブロック境界として用い、海溝域のプレート境界は、矢吹&松浦によって提唱されたスプライン補間の関数を用いた。このブロック形状の下、ブロック断層モデリングの解析を時間変化まで含めて解析する時間依存のインバージョンを開発・適用し、内陸域及び海溝域のプレート間カップリングを推定した。日本全国の1200点程のGNSS観測点の東西、南北、上下の座標時系列を使用している。解析期間は、1997-2011年、2013-2015年とした。元の座標時系列データから、地震に伴う地殻変動と周期変動成分を取り除いて解析に使用している。
結果と考察
東北地方太平洋沖地震前の結果では、2003年十勝沖地震のアフタースリップが推定された。十勝沖地震のアフタースリップは2003年の地震の震源域で推定され、時間と共に北東にすべりの中心が移動している様子が推定された。2005年の宮城県沖の地震後には、宮城沖での固着の弱化とその回復する様子が推定されている。2008年の茨城県沖、福島県沖の地震後には、福島、茨城沖での固着の弱化が推定された。福島・茨城沖の固着の弱化は2011年東北地震の前まで続いている。フィリイピン海プレートにおいては、1997, 2003, 2010 年に豊後水道のスロースリップが検出された。また、九州東岸の固着が2002年、2006年に弱まる様子が推定され、九州東岸のスロースリップの発生が示唆された。また東海のスロースリップが2001年以降検出された。東北地方太平洋沖地震後の解析では、豊後水道のスロースリップ、九州東岸のスロースリップ、紀伊水道のスロースリップが検出された。これらの結果は、定常状態を仮定することなく推定されており、定常状態を仮定しない解析でも、各種スロースリップをモニターすることがある程度可能であることが示された。また日本全国の解析なので、境界条件等を考慮することなく解析することができるようになっている。
時間変化を含めた日本のブロック断層モデリングを行った。その結果、東北地方太平洋沖地震前のデータから、2003年十勝沖地震のアフタースリップ、2005年の宮城県沖の地震による宮城県沖での太平洋プレートと陸側プレート間の固着の弱化、2008年の茨城県沖、福島県沖の地震後の福島、茨城沖での太平洋プレートと陸側プレート間の固着の弱化が推定された。フィリイピン海プレートにおいては、豊後水道のスロースリップ、九州東岸のスロースリップ、東海のスロースリップが検出された。東北地方太平洋沖地震後の解析では、豊後水道のスロースリップ、九州東岸のスロースリップ、紀伊水道のスロースリップが推定された。九州東岸のスロースリップは、矢来&宗包(2015)、西村&越智(2015)によってはじめて発見されているが、本解析でも捉えられることが示された。また、紀伊水道のスロースリップでは、紀伊半島沖でプレート間の固着が次第に小さくなっていく様子が捉えられた。以上の結果から、定常状態を仮定しなくても、ある程度遷移的な事象を本解析手法で捉えられることがわかった。
はじめに
日本付近の沈み込み帯のプレート間カップリングを精度よく求めることは、将来の海溝型大地震の発生の場所・規模を推定する上で大変重要である。特に西南日本の駿河・南海トラフ沿いで発生する東海・南海地震は比較的高い発生確率が推定されている。このような中、日本のプレート間カップリングの研究が数多く行われてきた。しかしながら、これまでの研究では、マイクロプレートの運動を取り入れて、時間変化まで含めたモデル化はあまり行われていない。ここでは、時間変化まで含めたブロック断層モデリング手法を開発し、日本全国に適用してみた。
解析手法
日本地域のブロック断層モデルは、橋本他(200)によってGNSSの観測結果から行われている。本研究では、橋本他(2000)のブロックモデルの形状を使用して日本のブロックモデルを構築した。即ち、内陸では、橋本他(2000)の矩形断層をブロック境界として用い、海溝域のプレート境界は、矢吹&松浦によって提唱されたスプライン補間の関数を用いた。このブロック形状の下、ブロック断層モデリングの解析を時間変化まで含めて解析する時間依存のインバージョンを開発・適用し、内陸域及び海溝域のプレート間カップリングを推定した。日本全国の1200点程のGNSS観測点の東西、南北、上下の座標時系列を使用している。解析期間は、1997-2011年、2013-2015年とした。元の座標時系列データから、地震に伴う地殻変動と周期変動成分を取り除いて解析に使用している。
結果と考察
東北地方太平洋沖地震前の結果では、2003年十勝沖地震のアフタースリップが推定された。十勝沖地震のアフタースリップは2003年の地震の震源域で推定され、時間と共に北東にすべりの中心が移動している様子が推定された。2005年の宮城県沖の地震後には、宮城沖での固着の弱化とその回復する様子が推定されている。2008年の茨城県沖、福島県沖の地震後には、福島、茨城沖での固着の弱化が推定された。福島・茨城沖の固着の弱化は2011年東北地震の前まで続いている。フィリイピン海プレートにおいては、1997, 2003, 2010 年に豊後水道のスロースリップが検出された。また、九州東岸の固着が2002年、2006年に弱まる様子が推定され、九州東岸のスロースリップの発生が示唆された。また東海のスロースリップが2001年以降検出された。東北地方太平洋沖地震後の解析では、豊後水道のスロースリップ、九州東岸のスロースリップ、紀伊水道のスロースリップが検出された。これらの結果は、定常状態を仮定することなく推定されており、定常状態を仮定しない解析でも、各種スロースリップをモニターすることがある程度可能であることが示された。また日本全国の解析なので、境界条件等を考慮することなく解析することができるようになっている。