[SSS10-P21] GNSS観測に基づく2016年熊本地震の余効変動の時系列解析
キーワード:2016年熊本地震、余効すべり、粘弾性緩和
2016年4月16日に発生した熊本地震 (M7.3) に伴う余効変動について九州本土と天草諸島に設置されているGEONET点の日座標時系列解析を行い, その特徴を調べた. 余効変動の主な要因については余効すべりと粘弾性緩和が挙げられ,それぞれ対数関数, 指数関数での時間発展が予測されている. 本研究では,九州のGEONET観測点134点について, 国土地理院が提供する日座標系 (F3解) を使用した. 2013年1月1日から2016年4月14日までの時系列を定常変動と仮定して, 直線, 年周, 半年周成分で近似し, 2016年熊本地震以降2016年11月12日までの時系列からその成分を差し引いて余効変動時系列を抽出した. 時間発展を対数関数でモデル化された余効すべりの理論式で近似期間を本震後50日,100日,211日に区切って近似し,振幅と時定数を求めると共に,余効すべりをよりよく説明するための近似期間を推定した. 求められた各観測点の時定数は中尾・他 (2016) が示す0.8~36日の余効すべりの時定数と調和的である. またこの結果より熊本地震の余効すべりは50日から100日で収束しているように見える. 余効すべりが1つの現象であると仮定して,求められた各観測点の時定数に対し統計的処理を行う事により熊本地震の共通の時定数を推定した結果, その値は1.84~2.50日となった. この結果は2004年新潟県中越地震 (M6.8) の際にTakahashi et al, (2005) によってGNSS観測の解析結果から得られた値0.03~1.69日よりわずかに大きい値であった. これらの定数を用いて観測時系列に再近似を行うと,大きな振幅は震源域周辺で見られ,また,別府など震源断層から北東部の地域でも比較的大きいことが分かった.観測された余効変動時系列から余効すべりの理論時系列を差し引いた残差時系列には線形的な時間発展をする観測点と時間発展する観測点が見られた. 本研究では時間発展する変動分を粘弾性緩和による変動とみなして, 指数関数でモデル化された粘弾性緩和の理論式で残差時系列に対する近似を行い, 振幅と時定数を求めた. この結果, 震源域周辺では時定数が10000以上となる事から粘弾性緩和が11月12日時点で継続中である,または,近似する関数について再検討する必要があると考えられる.今後, 観測期間を延長することにより定量的評価が行える可能性がある.