JpGU-AGU Joint Meeting 2017

講演情報

[EJ]Eveningポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-SS 地震学

[S-SS12] [EJ] 活断層と古地震

2017年5月23日(火) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (国際展示場 7ホール)

[SSS12-P07] フランス人宣教師ルイ・ヒュレ氏による地震観測記録から推定した1858年前後の沖縄島周辺での地震活動

織田 拓真1、*中村 衛1 (1.琉球大学理学部)

キーワード:沖縄、地震活動、群発地震

19世紀半ば、西洋諸国は通商を求めて琉球を訪れていた。彼らの中には沖縄(那覇)滞在中に気象観測・地震観測を行っていたものがおり、彼らの残した記録から、史料に乏しい琉球王府時代の地震活動を探ることができた。フランス人宣教師ルイ・ヒュレは1857年から1860年にかけて那覇に滞在し、当地で気象・地震観測をおこなっていた。その記録がフランスに残されており、ベルギー王立気象研究所のDemarée教授らによって出版された(Demarée et al., 2016)。この資料を基に1857年から1859年の那覇での地震活動を解析した。
まず、資料に記載された揺れの大きさを震度に置き換えた。資料には地震の時刻と揺れの大きさが記載されていた。揺れの弱い順に”La secousse”、” légère secousse”、”forte secousse”、”violente secousse”、”secousse assez forte”となっている。”secousse assez forte”の地震の中には建物にヒビが入る揺れであったと記載されているものがあることから、建物被害が記載されている時の”secousse assez forte”を震度5弱として、”secousse assez forte”のみ記載されたものを震度4、”violente secousse”を震度3、”forte secousse”を震度2、”la secousse”と” légère secousse”を震度1とした。
また震度と揺れの継続時間を用いて震央距離とマグニチュードを推定した。カタログの中で6個の地震では揺れの継続時間が記されていた。継続時間は約60秒から120秒であった。これらの地震に対して震央距離とマグニチュードを推定した。計測震度の理論計算は司・翠川(1999)の式を用いた。揺れの継続時間は能島 (2014)によるマグニチュード・震央距離と震度(震度1)継続時間との回帰式を用いた。
揺れの表記を震度に変換した結果、1858年に震度3以上の揺れが7回あったことが明らかになった。沖縄気象台による1923年以降の那覇での震度観測では、震度3以上の揺れを年3回以上観測した年は4回しかなく、さらに震度3以上を年7回以上記録した年はない。このことから、1858年は最近90年間と比較して地震活動が活発であったといえる。
さらに、1858年9月22日から11月7日の間に発生した3個の地震(最大震度3~4、揺れの継続時間が60~120秒)の震央距離は50~100km、マグニチュードは5.5から6.5と推定した。これらは揺れの小さなものまで含めると群発地震的な活動を示している。この時期の活動は球陽にも「本年八月の間より十二月の間に至るまで、屢ゝ地震有り。」と記載されており、宣教師の観測記録と良く一致している。これらのことから、ちょうど宣教師が那覇に滞在した時期に、那覇からやや離れた地域でM6クラスの地震を3個伴う群発地震活動が約5か月継続したと推定した。