JpGU-AGU Joint Meeting 2017

講演情報

[EJ]Eveningポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-SS 地震学

[S-SS12] [EJ] 活断層と古地震

2017年5月23日(火) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (国際展示場 7ホール)

[SSS12-P11] 能登半島南部,邑知潟断層帯野寺断層の断層幾何学

*高橋 啓太1小林 健太1 (1.新潟大学理学部地質科学科)

キーワード:活断層、邑知潟断層帯、野寺断層、断層岩

邑知潟断層帯は石川県中部に位置するNE走向の逆断層型の活断層帯である(活断層研究推進本部,2005).本断層帯は宝達丘陵の北西縁に沿って連続して分布するが,西南部地域では断層が平野から丘陵にかけて分岐・並走する分布を示す.その中でも丘陵側を構成する野寺断層および坪山-八野断層では断層面の姿勢や隆起方向が異なることが示されているが,その要因は明らかにされておらず,構造地質学的研究例も乏しい.そこで本研究では野寺断層およびその西側の丘陵内部に推定されている断層の形態・および断層幾何学を解明することを目的として野外調査・試料解析及び断層解析を行った.

本研究地域周辺地域は宝達山花崗岩体と呼ばれるジュラ紀の花崗岩類を主体とした基盤岩類が広く分布し,一部は第四系により不整合で覆われる.

本研究では,野寺断層の側方延長部において破砕帯露頭を見出し,野寺断層の西側の丘陵部からも野寺断層と並走する破砕帯を確認した.これらの破砕帯露頭は一般にNNE-SSW走向で外縁部の断層ガウジは横ずれから斜めずれセンスを示す一方,中軸部の断層ガウジは左横ずれ成分を含む逆断層センスを示す.また本研究地域には,基盤岩を切るNNW-SSE走向の斜めずれから横ずれセンスを示す断層が多数分布し,一部NNW-SSE走向やNW-SE走向の断層が分布する.

これらの断層面から得られたスリップデータを用いて多重逆解法(山路,2000など)による古応力解析を行った.その結果,NNE-SSW圧縮を示す応力1,WNW-ESE圧縮を示す応力2の応力が得られた.応力1はNNE-SSW走向の断層の横ずれから斜めずれセンスを示す断層ガウジのデータとNW-SE走向の逆断層センスを示す断層ガウジのデータが該当した.これらは応力2に該当する断層面に切断されるため,応力2以前に形成されたと考えられる.応力2には逆断層センスを示すNNE-SSW走向とNNW-SSE走向の断層の中軸部から得られたデータが該当した.この応力は塚原・池田(1991)による現在の最大水平圧縮応力方位や2007年能登半島地震のメカニズム解と調和的である.

主要なNNE走向の破砕帯の断層ガウジについてX線回折分析を行った結果,破砕帯の外縁部の試料はイライトが多く含まれており,中軸部の試料はスメクタイトが多く含まれているという結果が得られた.このことから同じ破砕帯の外縁部と中軸部のガウジが異なる環境下で形成されていると考えられる.

先行研究(三崎,1980)では野寺断層は横ずれ成分を伴わない逆断層センスとされていたが,破砕帯露頭で得られたデータから左横ずれ成分を伴うと考えられる.これは周囲の変位地形と調和的である.また左横ずれセンスを伴う逆断層であるとすると,応力2が得られたNNW-SSE走向の断層はNNE-SSW走向の断層の二次剪断面として活動している可能性がある.また,古応力解析とX線回折分析の結果を踏まえると,野寺断層や丘陵内部に並走する断層は基盤内部に形成された破砕帯を再利用して,現在の応力下で活動していると考えられる.重力異常により求められた基盤高度分布は海岸平野まで基盤岩が浅所に分布することを示しており,平野側を並走する断層や坪山-八野断層も同様に基盤岩に形成されている破砕帯を再利用して活動している可能性がある.