JpGU-AGU Joint Meeting 2017

講演情報

[JJ]Eveningポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-SS 地震学

[S-SS13] [JJ] 地震活動

2017年5月25日(木) 15:30 〜 16:45 ポスター会場 (国際展示場 7ホール)

[SSS13-P16] 防災科研Hi-netで捉えられた東海地域での小繰り返し地震

*松原 誠1 (1.防災科学技術研究所)

キーワード:繰り返し地震、東海、フィリピン海プレート

1. はじめに
プレート境界の準静的すべり領域の周囲では小繰り返し地震が発生している(Igarashi et al., 2001; Uchida et al., 2003)。東海地域においては、防災科学技術研究所(防災科研)の関東東海観測網のデータを用いて、1980年~2004年の期間においてフィリピン海プレート上面境界で起きていると考えられる小繰り返し地震が検出されている(Matsubara and Obara, 2006)。本研究では、防災科研の高感度地震観測網(Hi-net)のデータを用いて、東海地域における最近の小繰り返し地震の活動状況を調べた。

2. データ・手法
2000年10月~2015年12月に北緯34°~36°、東経136.5°~139°、深さ0~500kmにおいて発生したM1.5以上の20,331個の地震を解析に用いた。陸域の下の地震活動について注目し、ある地震から0.1°四方の地震について、波形の比較を行った。低周波成分では相関係数が高くなることから、観測点における上下動成分の波形に1~4Hzのバンドパスフィルターをかけ、計算時間の短縮のため100Hzの波形を20HzにデシメーションをしたうえでP波到達の1秒前から10秒間、もしくはP波到達の1秒前からS波の5秒後までの短いほうの波形について相互相関係数を計算した。その結果から、相互相関係数が,0.80以上の観測点が1観測点以上ある地震の組み合わせを小繰り返し地震の候補として抽出し、改めて100Hzの波形を用いてP波到達の1秒前からS波の5秒後まで、もしくはP波到達の1秒前から40秒間の波形について相互相関係数を計算した。その結果から、震央距離100km以内の3観測点以上で相関係数が0.95以上を記録した地震の組み合わせを小繰り返し地震とした。

3. 結果
第2段階の処理の結果4697個からなる1194グループの小繰り返し地震が検出された。このうち、最初と最後の活動が2年以下のグループについてはバースト的な活動とみなした。その結果、341グループが2年以上に渡って活動している小繰り返し地震として抽出された。
プレート境界付近で起きていると考えられる逆断層型の地震は藤枝付近の深さ18~27kmで11グループ(50個)発生している。また、森町付近の深さ23kmでは、1グループ(3個)の逆断層型の小繰り返し地震が抽出された。Nadeau and Johnson (1998)の式に基づいて2000年10月~2015年12月のプレート境界のすべり速度を推定すると藤枝の下、森町の下、ともに1.5cm/年となった。
浜名湖の北西・北・北東付近の深さ28~32kmでは、フィリピン海プレート内で発生している3つ小繰り返し地震のクラスターが存在する。発震機構解はいずれも横ずれ型であり、この付近の滑り速度はそれぞれ0.8~1.2cm/年であった。
深さ30km以深にも小繰り返し地震活動が抽出されたが、発震機構解はいずれも横ずれ断層型もしくは正断層型であった。この領域ではフィリピン海プレート上面での小繰り返し地震活動は抽出されなかった。
深さ100km以深の太平洋プレートの沈み込みに伴う領域で抽出された小繰り返し地震の発震機構解はいずれも横ずれ成分を含む逆断層型や横ずれ断層が主であった。深部における太平洋プレート上面境界での小繰り返し地震は抽出されなかった。

4. 議論
藤枝付近の小繰り返し地震活動はMatsubara and Obara (2006)においても抽出され、0.9cm/年のすべり速度が推定されている。本研究では1.4cm/年と推定されたが、地殻変動から推定される沈み込みの速度4.0cm/年(Seno et al., 1993)からはいずれも遅い速度となっている。
浜名湖付近の下では、フィリピン海プレート内において横ずれ断層型の小繰り返し地震が抽出されている。Matsubara and Obara (2006)においては3~4cm/年のすべり速度であったが、本研究においては0.8~1.3cm/年であった。

5. 結論
2000年10月~2015年12月までの防災科研Hi-netのデータを解析した結果、東海地域においてはフィリピン海プレート上面境界で発生している小繰り返し地震は藤枝付近や森町付近で発生していた。プレート間すべり速度は関東東海観測網のデータを解析して得られた速度0.9cm/年と同様に地殻変動から推定される速度よりも遅く、1.4cm/年であった。一方、内陸の地殻内やフィリピン海プレート内における小繰り返し地震も多数発生している。浜名湖の北では、関東東海観測網で得られたすべり速度よりは遅い際よりも遅い1cm/年前後のすべり速度であった。太平洋プレートの沈み込みに伴う地震にも小繰り返し地震が起きているが、いずれも沈み込む太平洋プレート内の地震活動であり、プレート境界では起きていなかった。