[SSS15-P20] 微動アレイ観測による関東地域全域の3次元S波速度構造モデルの構築<その2>
キーワード:微動アレイ探査、S波速度構造、地下構造モデル
1.はじめに
防災科研は、地震動特性の評価の精度を向上させる目的で、これまでに関東地域において浅部・深部統合地盤モデルの作成に取り組んできており1)、さらにこの地盤モデルを高度化するため、2009年~2016年にかけて関東地域の低地部において、微動探査(アレイ・単点・極小アレイ)を高密に実施してきた。先名ほか(2016)2)は、2015年度までに実施してきた約400地点の微動アレイ、約5000地点の極小アレイ微動探査結果と強震記録を用いてそれまでの地盤モデルをチューニングし、成果を得ている。
ここでは、深部地盤を対象として実施している微動アレイ探査について、2016年に新たに実施した約100地点のデータを加えてさらにチューニングを施した結果を報告する。
2.微動アレイ探査(観測と解析)
防災科研はこれまでに関東地域7都県の低地部において、約5km間隔、414地点で微動アレイ探査を実施してきた。これに加え2016年には、千葉・東京・神奈川を対象に新たに103地点において追加観測を行い、関東地域における実施合計は517地点(うち強震観測地点351点)となった。
展開するアレイの大きさは、工学的基盤相当層以深をターゲットとしていることから、半径100~400m(一部半径800mでの観測も実施)の正三角形アレイおよび辺長75mのL字型としている。なお観測に用いた微動計は、JU210、JU215(白山工業社製)およびアレイの一部ではVSE-15D6(東京測振社製)である。
このようにして得られた位相速度からS波速度構造を推定するために、強震記録のR/Vスペクトル(または微動記録のH/Vスペクトル)を併せて、ジョイントインバージョンを実施した。
なお、既往の微動探査が実施され結果が公表されている3)4)地点等では、その既往微動アレイの位相速度と本研究での観測で得られた位相速度とを接合して、S波速度構造解析に使用した。
3.まとめ
微動アレイ探査と強震記録により、特に今回データが追加された東京周辺において、500~900m/s程度の中速度層(0.5~3Hz程度の周波数帯に対応)が修正された。作成した地盤モデルは差分法を用いて検証し、これまでの地盤モデルから大きく改善されたことが確認できている。
防災科研では、2016年より東海地域においても微動観測を展開している。今後は、東海地域における統合地盤モデルの作成に取り組んでいく予定である。
謝辞
本研究は,総合科学技術・イノベーション会議のSIP(戦略的イノベーション創造プログラム)「レジリエントな防災・減災機能の強化」(管理法人:JST)によって実施されました。
参考文献)
1) Senna,S,,T.Maeda,Y.Inagaki,H.Suzuki,H.Matsuyama,and H.Fujiwara(2013):Modeling of the subsurface structure from the seismic bedrock to the ground surface for a broadband strong motion evaluation,J.Disaster Res.,8,889-903.
2) 先名ほか(2016);強震動評価のための関東地域における浅部・深部統合地盤モデルの構築,地球惑星科学連合大会,SSS25-12.
3) 松岡・白石(2002);関東平野の深部地下構造の精査を目的とした微動探査法の適用性-埼玉県南部地域の三次元S波速度構造の推定-,BUTSURI-TANSA,Vol.55,No.2,pp.127-143.
4) 山中浩明・山田伸之(2002) :微動アレイ観測による関東平野の3次元S波速度構造モデルの構築, 物理探査,55,pp.53-65.
防災科研は、地震動特性の評価の精度を向上させる目的で、これまでに関東地域において浅部・深部統合地盤モデルの作成に取り組んできており1)、さらにこの地盤モデルを高度化するため、2009年~2016年にかけて関東地域の低地部において、微動探査(アレイ・単点・極小アレイ)を高密に実施してきた。先名ほか(2016)2)は、2015年度までに実施してきた約400地点の微動アレイ、約5000地点の極小アレイ微動探査結果と強震記録を用いてそれまでの地盤モデルをチューニングし、成果を得ている。
ここでは、深部地盤を対象として実施している微動アレイ探査について、2016年に新たに実施した約100地点のデータを加えてさらにチューニングを施した結果を報告する。
2.微動アレイ探査(観測と解析)
防災科研はこれまでに関東地域7都県の低地部において、約5km間隔、414地点で微動アレイ探査を実施してきた。これに加え2016年には、千葉・東京・神奈川を対象に新たに103地点において追加観測を行い、関東地域における実施合計は517地点(うち強震観測地点351点)となった。
展開するアレイの大きさは、工学的基盤相当層以深をターゲットとしていることから、半径100~400m(一部半径800mでの観測も実施)の正三角形アレイおよび辺長75mのL字型としている。なお観測に用いた微動計は、JU210、JU215(白山工業社製)およびアレイの一部ではVSE-15D6(東京測振社製)である。
このようにして得られた位相速度からS波速度構造を推定するために、強震記録のR/Vスペクトル(または微動記録のH/Vスペクトル)を併せて、ジョイントインバージョンを実施した。
なお、既往の微動探査が実施され結果が公表されている3)4)地点等では、その既往微動アレイの位相速度と本研究での観測で得られた位相速度とを接合して、S波速度構造解析に使用した。
3.まとめ
微動アレイ探査と強震記録により、特に今回データが追加された東京周辺において、500~900m/s程度の中速度層(0.5~3Hz程度の周波数帯に対応)が修正された。作成した地盤モデルは差分法を用いて検証し、これまでの地盤モデルから大きく改善されたことが確認できている。
防災科研では、2016年より東海地域においても微動観測を展開している。今後は、東海地域における統合地盤モデルの作成に取り組んでいく予定である。
謝辞
本研究は,総合科学技術・イノベーション会議のSIP(戦略的イノベーション創造プログラム)「レジリエントな防災・減災機能の強化」(管理法人:JST)によって実施されました。
参考文献)
1) Senna,S,,T.Maeda,Y.Inagaki,H.Suzuki,H.Matsuyama,and H.Fujiwara(2013):Modeling of the subsurface structure from the seismic bedrock to the ground surface for a broadband strong motion evaluation,J.Disaster Res.,8,889-903.
2) 先名ほか(2016);強震動評価のための関東地域における浅部・深部統合地盤モデルの構築,地球惑星科学連合大会,SSS25-12.
3) 松岡・白石(2002);関東平野の深部地下構造の精査を目的とした微動探査法の適用性-埼玉県南部地域の三次元S波速度構造の推定-,BUTSURI-TANSA,Vol.55,No.2,pp.127-143.
4) 山中浩明・山田伸之(2002) :微動アレイ観測による関東平野の3次元S波速度構造モデルの構築, 物理探査,55,pp.53-65.