JpGU-AGU Joint Meeting 2017

講演情報

[EJ]Eveningポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-TT 計測技術・研究手法

[S-TT57] [EJ] 合成開口レーダー

2017年5月24日(水) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (国際展示場 7ホール)

[STT57-P02] 干渉SAR解析を用いた2016年熊本地震前後の九重山の地表変動の推定

*三村 祐介1石塚 師也2小田 義也1 (1.首都大学東京、2.北海道大学大学院工学研究院)

キーワード:干渉SAR、差分干渉SAR、SBAS法、熊本地震、九重山、ALOS2/PALSAR2

2016年熊本地震は、別府-島原地溝帯に沿って発生し、熊本地方を中心に九州地方に大きな被害をもたらした。この別府-島原地溝帯に位置する活火山である九重山は、現在でも噴煙が確認され、今後の活動が注視されている。
 本研究では、差分干渉SAR解析および干渉SAR時系列解析を用いて熊本地震前後の地表変動を検出した。地表変動量が大きいと考えられる地震直後の2016年4月18日と2016年6月13日に取得されたペアには差分干渉SAR解析を適用し、それ以外のペアには干渉SAR時系列解析の1つであるSmall BAseline Subset (SBAS)法を適用した。差分干渉SAR解析には南向軌道で取得されたデータ(パス23、フレーム2950)を用いた。SBAS法の解析には、ALOS-2/PALSAR-2によって2014年8月から2016年2月の間に収得された北向軌道6シーン(パス130、フレーム650)を用いた。一方、熊本地震後の時系列解析には、2016年4月から2016年10月間に南向軌道で取得されたデータ13シーン(パス23、フレーム2950)を用いた。
 差分干渉SAR解析の結果、熊本地震直後の2016年4月18日から6月13日の間に、硫黄山で約4cm、久住山で約3cm、八丁原地熱発電所付近で約2cmもの隆起と考えられる衛星に近づく向きの変動が九重山全体で確認できた。解析結果と国土地理院が運営するGEONETデータとの変動差は0.02cmであり、両データは整合的であると言える。九重山で顕著な火山性地震の増加が確認できないことや広範囲の変動であることから、吉川ほか(2003)が推定しているような九重山の深さ約5km以深にあるとされている断層帯での熱流体の移動に関係する可能性がある。
 SBAS法を用いた解析では、硫黄山・久住山で熊本地震前後の両方において、同様に不規則な隆起と沈下が確認されたが、前後での変動パターンは時空間的に異なるものであった。原因については地震活動や傾斜計との相関は見られず、明確にわかっていない。GEONETデータとのRMSEは0.51cmであり、両データは整合的であると言える。また、八丁原地熱発電所付近では熊本地震前後ともに年約14~16mmの直線的な沈下変動が確認できた。これはIshitsuka et al,(2016)が2007年7月から2010年12月の期間で行った結果と整合的である。
 本研究では、2014年8月から2016年10月までの九重山の変動を明らかにした。熊本地震後の地表変動をより明らかにするには、より長期間のデータを用いて解析することにより、干渉SAR時系列解析の精度を上げる必要があると考える。