JpGU-AGU Joint Meeting 2017

講演情報

[EJ]Eveningポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-TT 計測技術・研究手法

[S-TT57] [EJ] 合成開口レーダー

2017年5月24日(水) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (国際展示場 7ホール)

[STT57-P03] 継続的な差分干渉SAR解析による熊本地震後の地表面変動分布図作成の防災的意義と課題

*宝楽 裕1木村 誇2酒井 直樹2上石 勲2園部 雅史1木村 詩織1下村 博之1武田 大典1 (1.株式会社パスコ、2.国立研究開発法人 防災科学技術研究所 気象災害軽減イノベーションセンター)

キーワード:地表面変動分布図、差分干渉SAR、地すべり、平成28年熊本地震、ALOS-2

平成28年(2016年)熊本地震により、被災地域では斜面崩壊や地すべり等の土砂災害や液状化等の地盤災害が多発しており、道路や橋梁等のインフラや農地・農業用施設への甚大な被害が生じている。また、地震後の豪雨により、地震で地盤が緩んだ場所の崩壊や地震による崩壊土砂の土石流化が発生しており、今後も危険性が高い状態が継続することが懸念される。
国立研究開発法人防災科学技術研究所では、災害直後から震源・深度分布、地震による建物被害推定、空中写真判読による土砂移動分布図の作成、現地における被害状況把握、リアルタイムレーダー雨量解析を実施しており、ホームページ公開などを通じて地元自治体へ防災情報の提供を行ってきた。本発表では、それらの試みの一つとして、合成開口レーダー(SAR)画像を用いた継続的な差分干渉SAR解析に基づき、地震後約7ヶ月間の地表面変動分布図を作成した結果を報告する。また、現地調査で地表面変動分布図を検証した結果を踏まえ、SAR画像を用いた広域・長期にわたる地表面変動抽出について防災情報としての利用に向けた課題を挙げる。
解析にあたり、ALOS-2(Lバンド)画像は2016年5月から同年11月にかけて継続的に撮影され、災害前後のアーカイブ画像を含めた15枚105組による差分干渉SAR解析を行い、時系列での比較を行った。解析結果より、対象範囲(熊本県内にて設定した1600km2)における地表面変動の抽出や衛星視線方向の地表面変動量の算出を行い、地表面変動分布図を作成した。地表面変動分布図の作成において、メッシュ単位や道路区間ごとに地表面変動量を平均化して図化することにより、広域にわたる変動候補箇所の分布をわかりやすく表現できた。一方、メッシュ単位や道路区間毎の表示は実際の地変現象の特徴(例えば、地すべり性の変位を起こしている斜面の規模や変位方向)が分かりづらくなる面があり、また地表面変動量を衛星視線方向ではなく2次元の成分に分解する等、変動量の表現に改良が必要と考えられた。
衛星画像より抽出された地表面変動は事象(地すべり、地盤沈下、液状化等)の考察を行い、現地調査による確認を実施した。同年6月の豪雨前後やその後の期間に変動が抽出された箇所は現地でも地表面変動の痕跡(道路面の亀裂など)を確認することができた。高野台地区(京都大学火山研究センター付近)の大規模斜面崩壊箇所では、崩壊土砂の流出によると考えられる変動が確認された。赤瀬川地区(阿蘇大橋付近)では工事による斜面整備等の人為的な改変によるものと思われる変動が確認された。また、地上センサにより斜面変位が観測されている箇所(高野台地区、大峯山地区)では調査期間中に顕著な斜面変位は検知されておらず、差分干渉SAR解析においてもノイズレベルを超える変動は検出されなかった。一方、差分干渉SAR解析で地表面変動が認められたにもかかわらず現地ではその痕跡が確認できない箇所もあった。これらの事例についてはケースによって原因が異なると考えられるため、個別に精査する必要がある。