[STT58-P04] 空からの放射線測定に対する逆解析の適用
キーワード:ドローン、μUAV、遠隔放射線測定、地形補正、逐次近似法、福島第一原子力発電所事故
福島原子力発電所の事故以来、有人や無人のヘリコプターを用いて空からの放射線計測が行われている。ドローンは安価・小型及び操縦が簡単であることから、狭い地域を手軽に測定できるツールとして有用である。原子力機構では、環境中の放射線量率分布の詳細な測定のために、ドローンを用いた放射線測定手法の研究を行っている。上空からの放射線モニタリングにおいて、地上への線量換算は、地表面の線量率が一定であり地形が平面であるモデル (平面モデル) 及び高度と検出器の計数率の指数関数的な相関関係を前提としている。よって、線量率の不均一な場所や山間部での測定データは地上値をトレースすることが難しい。特に、ドローンがフライトするのに適している50 m以下の高度では、周辺の樹木や地形に勾配等が影響し、単純な平面モデルによる換算では地上値と一致しない場合がある。本研究では、医療分野において用いられている逐次近似画像再構成の手法を応用し、環境の放射線測定用のアルゴリズムを作成、空からの測定値を地上値へ換算する手法を検討した。
放射線の測定には、市販のドローン(3D Robotix社製)をベースにした開発機を使用した。放射線測定器にはGAGGシンチレーション検出器 (2×2×2cm) を使用し、3秒毎にγ 線スペクトルデータ及びGPS データを取得するとともに、比較のため歩行式サーベイメータを用い地上の放射線分布情報を得た。また、同エリアにおいて写真測量を実施し、DSM (Digital surface model) データを取得した。試験は福島県内における数箇所のエリアで測定を実施した。本研究の逐次近似法のアルゴリズムは、検出器iでの測定値Yiは地上地点jでの地上値λjと地上jから検出器iへの減衰係数Cijの積の和で表されると仮定した。検出器iにおける測定値Yiは、式[1]で表される。
Yi=Σ[j=1→B] λj Cij [1]
ここでBは計算する地上地点ポイント数である。減衰係数Cijには距離に応じた空気源弱係数と検出器の角度に応じた角度補正係数を適用した。距離及び角度による減弱係数にはCs-137の放出する662 keV点線源の距離に応じての全エネルギーカウントの光子の減衰をPHITSにより計算した結果を使用した。
福島県内の団地における測定結果に対して、従来手法適用結果ではNMSE=0.105だったのに対し、逐次近似法適用結果ではNMSE=0.034と、従来に比べ地上値により近い結果を得ることができた。森林・住宅を含むエリアでは従来法でNMSE=0.302、逐次近似法でNMSE=0.214となり、従来法からの大きな改善は見られなかった。この原因は、放射線のエネルギー情報が考慮されていないことや、森林部の遮蔽係数の調整が上手くできていないことなどが考えられる。今後、様々な条件における測定結果を蓄積し、アルゴリズムの最適化を行うことで、マップの詳細化に有用な手法になると考えられる。
放射線の測定には、市販のドローン(3D Robotix社製)をベースにした開発機を使用した。放射線測定器にはGAGGシンチレーション検出器 (2×2×2cm) を使用し、3秒毎にγ 線スペクトルデータ及びGPS データを取得するとともに、比較のため歩行式サーベイメータを用い地上の放射線分布情報を得た。また、同エリアにおいて写真測量を実施し、DSM (Digital surface model) データを取得した。試験は福島県内における数箇所のエリアで測定を実施した。本研究の逐次近似法のアルゴリズムは、検出器iでの測定値Yiは地上地点jでの地上値λjと地上jから検出器iへの減衰係数Cijの積の和で表されると仮定した。検出器iにおける測定値Yiは、式[1]で表される。
Yi=Σ[j=1→B] λj Cij [1]
ここでBは計算する地上地点ポイント数である。減衰係数Cijには距離に応じた空気源弱係数と検出器の角度に応じた角度補正係数を適用した。距離及び角度による減弱係数にはCs-137の放出する662 keV点線源の距離に応じての全エネルギーカウントの光子の減衰をPHITSにより計算した結果を使用した。
福島県内の団地における測定結果に対して、従来手法適用結果ではNMSE=0.105だったのに対し、逐次近似法適用結果ではNMSE=0.034と、従来に比べ地上値により近い結果を得ることができた。森林・住宅を含むエリアでは従来法でNMSE=0.302、逐次近似法でNMSE=0.214となり、従来法からの大きな改善は見られなかった。この原因は、放射線のエネルギー情報が考慮されていないことや、森林部の遮蔽係数の調整が上手くできていないことなどが考えられる。今後、様々な条件における測定結果を蓄積し、アルゴリズムの最適化を行うことで、マップの詳細化に有用な手法になると考えられる。