JpGU-AGU Joint Meeting 2017

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[JJ]Eveningポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-TT 計測技術・研究手法

[S-TT60] [JJ] ルミネッセンス・ESR測定の年代学・地球惑星科学への貢献

2017年5月24日(水) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (国際展示場 7ホール)

[STT60-P02] 石川県能登半島における海成段丘堆積物のルミネッセンス年代測定と隆起速度評価

*伊藤 一充1田村 亨1 (1.産業技術総合研究所地質調査総合センター)

キーワード:ルミネッセンス年代測定、海成段丘、能登半島、隆起速度

海成段丘の海成層は,最近数十万年間の氷期-間氷期サイクルにおける間氷期(高海水準期)に堆積した浅海成堆積物が隆起することでできたと考えられているため,この堆積物の形成時期や標高を調べることで,隆起速度が得られる.能登半島でも過去の高海水準期であるMarine isotope stage (MIS) 5c, 5e, 7, 9などの時期に形成された海成段丘が存在しているが,その年代の根拠はMIS5eにおけるU/Th年代に限られる.そこで,本研究では海成段丘海成層から抽出したカリ長石にpost-IR IRSL (pIRIR) 法を適用し,段丘編年との比較を行い,隆起速度を見積もった.能登半島北部に位置する珠洲市のMIS5cとされる露頭では,侵食面を境にして下位にエスチュアリー~内湾堆積物,上位に浅海堆積物が見られ,それぞれの年代は137±7ka,102±3kaであった.これらはMIS5eとMIS5cに対比され,先行研究のU/Th年代とも調和的であった.ただし,浅海堆積物中に海面指標は確認されなかったため,上位の海成層のトップの標高に基づき隆起速度の下限値を求め,0.41m/kyという結果を得た.能登半島南部に位置する七尾市や志賀町ではMIS7, 9の海成段丘中の海流堆積物から,それぞれ段丘編年とも調和的な220±18 ka と317±27 kaという年代を得た.堆積相解析を合わせ,これらの時代は能登半島と本州との間には北東方向の海流の流れる海峡があったが,その後の隆起により陸化したことがわかった.海面指標は得られなかったが,隆起速度の下限値は0.17 m/kyと0.14 m/kyであった.また,MIS9のもう一つの露頭では293±21 kaという少し若い年代が得られたが,これもMIS9と仮定すると,隆起速度の下限値は0.13 m/kyであった.本研究では,MIS5c, 7, 9の海成段丘でpIRIR年代を求め,それらは従来の段丘編年と調和的であった.また,隆起速度の下限値から推測すると,能登半島では南部より北部の方が隆起速度の速い傾向が見られた.

*本研究は原子力規制委員会原子力規制庁「平成28年度原子力発電施設等安全技術対策委託費(自然事象等の長期予測に関する予察的調査)事業」として実施した.