JpGU-AGU Joint Meeting 2017

講演情報

[JJ]Eveningポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-TT 計測技術・研究手法

[S-TT61] [JJ] ハイパフォーマンスコンピューティングが拓く固体地球科学の未来

2017年5月21日(日) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (国際展示場 7ホール)

[STT61-P03] 南海トラフ地震震源域内で中〜大規模地震が発生した後の推移のフォワードシミュレーションと対応する地殻変動

*兵藤 守1縣 亮一郎3市村 強2堀 高峰1 (1.海洋研究開発機構 地震津波海域観測研究開発センター、2.東京大学 地震研究所、3.東京大学大学院工学研究科)

キーワード:南海トラフ地震、地殻変動、巨大地震の切迫度

従来の描像からは南海トラフでは,地震間における地震活動は低調で,蓄積した歪は,M8クラスの巨大地震によってのみ間欠的に解消されると考えられていた.しかし,2016年4月1日に南海トラフ地震の想定震源域内で且つ1944年の東南海地震震源近傍の熊野灘において M6クラスの地震が発生している.また,最近の研究成果によると,宝永地震のような過去の超巨大イベントでは日向灘にまで南海トラフ地震の震源域が拡大していたことが示唆されており,過去においては南海トラフ地震の震源域内でM7クラスの地震(例えば1498年日向灘地震)も発生していたことになる.

巨大地震の震源域内で中〜大規模地震が発生した後の挙動としては,上で述べた2016年の南海トラフにおける熊野灘の地震のようにそのまま収束する場合もあれば,東北地方太平洋沖地震の前震 (2011年3月9日)のように,その後に引き続いて巨大地震に至ることもある.このように中〜大規模地震後に多様な変動が起こり得るのは,震源域の巨大地震への切迫度に応じて中〜大規模地震後の余効すべりの起こり具合いが変化するためである.つまり,M6-7地震の地震が巨大地震の想定震源域内で発生した際には,引き続いて地表・海底で観測される地殻変動の推移を適切に捉えることにより,余効すべりの進展パターンや,その後引き続いて発生しうるシナリオを絞り込むことができる可能性がある.

本講演では,南海トラフを対象に,これまでに蓄積されている様々な地震サイクルシミュレーション結果に対し,日向灘でのM7地震や熊野灘でのM6地震を様々なタイミングで発生させることによって,余効すべりの進展パターンと巨大地震との切迫度の関係をまずは調べる.次に余効すべりの進展パターンによって,既存地殻変動観測網でどういった地殻変動が期待されるかを整理し,既存の地殻変動観測から余効すべりの進展パターンが区別できるのかの検討や,より進展パターンを識別しやすくするために必要な観測量・観測点配置の検討を実施する.なお,余効すべりから期待される地殻変動の評価には,半無限弾性モデルのみならず,高詳細な地殻構造や地表形状を考慮した有限要素モデルを用いた地殻変動のフォワードシミュレーション(例えばAgata et al.,2015, Ichimura et al., 2016) を通しても実施し,より現実的な条件で期待される地殻変動を見積もる.