JpGU-AGU Joint Meeting 2017

講演情報

[JJ]Eveningポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-VC 火山学

[S-VC47] [JJ] 活動的火山

2017年5月22日(月) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (国際展示場 7ホール)

[SVC47-P04] 伊豆大島の多成分ひずみ計による観測の中長期的特性 --GNSSから推定されるひずみとの比較--

*山本 哲也1高山 博之1鬼澤 真也1高木 朗充1 (1.気象庁気象研究所)

キーワード:伊豆大島火山、ひずみ計、GNSS

伊豆大島火山の地殻変動の観測研究のために、伊豆大島南西部千波崎(SNB)においてボアホール型多成分ひずみ計による観測を2013年から実施している。ひずみセンサーの設置深度はおよそ地表から75m、海面下25mであり、水平面内で互いに45度ずつ異なる4方位(N34.2E, N10.8W, N55.8W, N100.8W)の線ひずみを観測している。これまでに、このひずみ計について、潮汐に対する応答、気圧に対する応答、波浪や地震に対応したシグナルなど、比較的短周期のひずみ変化に関する特性の調査を行ってきたが、観測データの蓄積に伴い1年程度の中期的特性、数年にわたる長期的な特性についても検討が可能となってきたことから、ここではGNSS観測や球状圧力源モデルから推定された中長期的ひずみ変化との比較調査を行った。ボアホール型ひずみ計の観測では、センサーのケーシング、ボアホールのセメント、周辺の地盤がどのようにカップリングしているかを直接的に知ることは出来ないので、設置した状況において地殻ひずみにどのように応答するかを知っておくことが重要である。GNSSや球状圧力源モデルによるひずみ推定値との比較はその有力な手段となる。
SNBの多成分ひずみ計は、水平4方位の線ひずみをCH0~CH3として測定しており、1秒値を連続観測データとして収録している。比較調査では、この1秒値から1時間値を作成して用いた。観測値に時折みられる異常な急変化(ステップ)は、他の3方位の成分との比較によって補正し、また潮汐、気圧の影響も補正した。この観測値との比較には、2種類のひずみ推定値を用いた。ひとつはGNSSによる推定値である。すなわち、SNBの近隣約4km以内にあるGNSS観測点3点の1日ごとの相対変位を用いて、この領域の平均的なひずみとして、水平方向の独立な3成分exx, exy, eyy を推定した。また、その値を座標変換して多成分ひずみ計のCH0~CH3の方位に対応する線ひずみを求めた。もうひとつは、球状圧力源モデルによる推定値である。伊豆大島における中長期的な地殻変動は、近似的に球状圧力源モデルで説明できることが知られている。球状圧力源の位置、深さ、体積変化量が与えられれば、理論値として任意の点のひずみを求めることができる。全島のGNSS観測から球状圧力源の位置や体積変化量の時系列が推定されており(気象研究所、2017)、それらに基いてSNBにおけるひずみ推定値を求めた。2つの推定値を相互に比べると、2012年から2016年にかけて、CH1およびCH2については長期的トレンドの大きさや周期1年程度の変化がよく類似していることがわかった。これらについては、良好な推定値が得られていると考えられる。
このCH1とCH2について、多成分ひずみ計の観測値と推定値の比較調査を行った。CH2の観測値には、2つのひずみ推定値と同様に、長期的な伸びと周期1年~1年半程度の伸び縮みを見ることができ、ひずみが極大、極小となる時期も観測値と推定値で概ね一致していた。2014年から2015年にかけての変化は、多成分ひずみ計で約6μstrain、GNSSで約4μstrain、球状圧力源モデルで約8μstrainの大きさとなっており、相互に対比しうる地殻変動データであること判断された。一方、CH1については、長期的トレンドはともかく、周期1年~1年半程度の伸び縮みに明瞭な対応はみられなかった。このような近隣のGNSS観測および球状圧力源モデルからのひずみ推定値との比較調査から、SNBの4成分のうちCH2については、中長期的な地殻変動の把握にも活用が可能であるとの見込みが得られた。