JpGU-AGU Joint Meeting 2017

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[JJ]Eveningポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-VC 火山学

[S-VC47] [JJ] 活動的火山

2017年5月22日(月) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (国際展示場 7ホール)

[SVC47-P09] 西之島火山の活動に伴う周辺海域の海水組成変化

*佐藤 泉1小野 智三1森下 泰成1濱崎 翔五1高橋 日登美1野上 健治2 (1.海上保安庁海洋情報部、2.東京工業大学火山流体研究センター)

キーワード:海域火山、西之島、変色水

小笠原諸島の西之島は、2013年11月に有史2度目のマグマ噴火を開始し、溶岩の流出を伴う活発な噴火活動が約2年間継続した。2015年11月を最後に噴火は確認されておらず、現在は静穏な状態が継続している。

海上保安庁では、2015年6月24日から7月7日までの期間に測量船「昭洋」と無人測量艇「マンボウII」により、2016年5月4日から6日までの期間に測量船「昭洋」により西之島周辺海域の調査を行った。2015年調査では無人測量艇「マンボウII」により、西之島の火口から方位角約30度毎、海岸線から200~875mの距離にある計21点で採水を行った。2016年5月の調査では測量船「昭洋」により採水バケツを用いて、西之島の火口から半径0.9海里、方位角45度毎の8地点で表層海水を採取した。また、参照点として、西之島から離れた各1点で海水を採取した。採水後直ちに船上でpH及び溶存炭酸ガスの計測を行い、調査後、東京工業大学火山流体研究センター草津白根火山観測所でF、Cl、SO4の分析を行った。F濃度はTsuchiya et al.(1985)によるトリメチルシリル化蒸留法でフッ素を単離した後、イオン選択性電極を用いて定量し、Cl、SO4濃度は希釈後,イオンクロマトグラフを用いて定量した。

2015年調査時は、ストロンボリ式噴火、溶岩流の流出といった噴火活動がみられ、西之島の火山活動が活発な時期であった。一方、2016年調査時は、山頂火口付近に噴気が認められるのみで、噴火活動は縮退傾向にあった。

2015年、2016年ともに、採取試料のpHや成分について、方位による著しい偏りはみられなかった。2015年調査時、南東、東側海岸に於いて溶岩が海に流れ込んでいたが、島全体から放出される熱水が大量に存在し、海水組成を変化させていたことが示唆される。また、火山性熱水と海水の反応により生じる変色水の分布を見ると、海岸線付近が濃く、海岸線から離れるにしたがって薄くなるため、海岸線付近で熱水が湧出して変色水が生成され風や潮流により広がることが示唆される。だが、西之島周辺海域で採取された海水組成について海岸線からの距離による変化は見られず、海岸線から200m以上離れた領域では熱水と海水の混合による濃度変化は現れないことがわかった。

2015年試料のpHは概ね8前後で、参照点の海水より酸性にシフトしていたが、2016年試料では全測点でpHは参照点の海水と同程度であった。pHの測定結果から、2015年には西之島周辺の広範囲に酸性の熱水の影響があったが、2016年は2015年に比べて熱水の影響が小さくなったことが示唆される。海上保安庁が継続的に行った航空機による目視観測では、2015年は黄緑色の変色水が分布していたのに対して2016年は青白色の変色水が分布していた。この色の変化からも西之島周辺海域における熱水活動は低下傾向にあるものと考えられる。

2015年試料のF濃度は参照点の海水と同程度であったが、2016年は参照点の海水よりも僅かに高かった。Cl濃度は、2015年には参照点と比べて低かったが、2016年は参照点とほぼ等しかった。一方,SO4濃度は、2015年は参照点よりも高かったが、2016年は参照点とほぼ等しかった。2015年試料は、参照点の海水と比べてF/Clモル比が高いのに対して、Cl/SO4モル比は明らかに低い。これに対して、2016年試料のF/Clモル比は参照点の海水の値よりも高いが、Cl/SO4モル比はほぼ等しくなっている。この結果から、2015年に西之島から放出されていた熱水は、海水と比べてClに対してFとSO4に非常に富んでいたと考えられ、高温の火山ガスの影響を強く受けていたものが大量に放出されていた事がうかがわれる。2016年になると放出される熱水は高温の火山ガスの影響を強くうけておらず、その放出量は著しく減少したものと推察される。