JpGU-AGU Joint Meeting 2017

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[JJ]Eveningポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-VC 火山学

[S-VC47] [JJ] 活動的火山

2017年5月22日(月) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (国際展示場 7ホール)

[SVC47-P36] 連成解析による爆発地震初動の数値的検討

*山田 大志1青山 裕2 (1.北海道大学大学院理学院 自然史科学専攻 地震学火山学講座、2.北海道大学大学院理学研究院 附属地震火山研究観測センター)

キーワード:ブルカノ式噴火、衝撃波管問題、OpenFOAM

ブルカノ式噴火に伴い発生する噴火地震は,爆発地震とも呼ばれる.爆発地震の波形解析によって,噴火機構を理解する上で重要な知見が多く得られている.多くの火山では,爆発地震の初動極性は全観測点において押しの極性を示すという特徴が報告されている(例えば,Minakami, 1960).震源の深さは,火口から深さ数キロの領域に推定される場合が多い(例えば,今井,1980).発震機構に着目すると,体積変化で観測波形を説明している研究(例えば,Tameguri et al., 2002)もあれば,鉛直方向のシングルフォースで観測波形を説明している研究もある(例えば,Ohminato et al., 2006).しかし,地震波解析で推定されるメカニズムが反映するのは,あくまで震源域の巨視的な力系までであり,地震波を励起する火道内の物理過程を一意に推定することは容易ではない.

ブルカノ式噴火に伴うマグマの破砕現象は,衝撃波管問題を応用したモデル化がなされている(例えば,Woods, 1998).そこで,爆発地震の波形的特徴に関連する知見を得る目的で,我々は衝撃波管問題を弾性媒質内で解き,管内衝撃波の生成と同時に励起される周辺変位場の数値計算を行った.計算には,数値流体計算ツールであるOpenFOAMを用いた.圧縮性流体と弾性体の連成解析が行えるよう,公開されているソルバーに独自の改変を加えた.基礎的な知見を得るという目的から,管内の流体は非粘性の理想気体に限定している.計算には,半径20 m,地表から深さ4 kmまで伸びる鉛直な円柱管を仮定し,その周囲およそ4 kmの領域で弾性変位場を計算した.初期状態での管内のdiaphragm(圧力不連続面)の位置は,爆発地震の震源の深さを参考に地表面下の1 km付近に設定した.diaphragmでの圧力差は,ブルカノ式噴火の爆発圧力を参考に数 MPaの範囲に設定し,下部に高圧流体が封入されている初期状態を仮定した.

計算では,管内圧力が初期値より増加した領域の深さ(diaphragmよりも上部)において,押しの変位が励起されている.反対に,管内圧力が初期値よりも減少する領域の深さ(diaphragmよりも下部)では,引きの変位が励起される.計算開始と同時に,diaphragm近傍の流体ー弾性体境界から弾性波が伝搬する.弾性波には,水平面から見て上向きに約30°の方向に初動極性の節面が形成される.節面よりも上側には押しの初動極性,節面よりも下側では引きの初動極性を示す波動場がそれぞれ伝搬する.この初動極性の節面構造を反映して,弾性管に近い領域の地表面では,押しの初動極性を示す変位波形が得られる.一方,弾性管から遠い領域では,変位波形の初動極性は引きの性質を示す.管内では,diaphragmよりも上側での増圧量と下側での減圧量の振幅比は,およそ1:2程度となる.初動極性の節面の角度は,管内の圧力変動の増圧/減圧比を反映しているのかもしれない.

Lokon-Empung火山での爆発地震(Yamada et al., 2016)を例に,観測波形と計算結果の特徴を比較する.爆発地震の初期位相の震源は,火口から約1kmの深さに推定されている.爆発地震の初動極性は,火口から1.7-6.9 km離れた範囲に設置した全観測点において押しの極性を示す.計算では,地表から深さ1 kmの領域にdiaphragmを仮定した場合には,火道を模した弾性管から1.5 km程度までの範囲の地表面では,観測波形に特有の押しの初動極性が再現された.一方で,より遠くの地点では,初動極性の節面が地表と交差するため,地表での変位波形に押しの初動極性は見られない.実際の噴火では,我々の単純な数値計算では表現されていない過程が存在しているのかもしれない.また,実際のブルカノ式噴火においては,長くても数十秒程度しか噴出が継続しないが,本計算では管内の流体を理想気体と仮定していることから,噴火の終了を再現できない.この噴火を止める機構を計算に取り入れることで,初動極性だけではなく,後続相に対しても計算結果と観測波形との比較検討ができる可能性がある.