[SVC48-P04] 吾妻山一切経に噴出する火山ガスの地球化学的特徴
キーワード:吾妻山、火山ガス、化学組成、水素・酸素安定同位体比
吾妻山は東吾妻, 中吾妻, 西吾妻の3つの成層火山体から構成される火山群であり, 東吾妻火山の一切経山では現在も噴気活動が認められる(長谷川ほか, 2011). 現在, 最も活発な噴気活動を継続している一切経山南斜面の大穴火口では, 最後の噴火が発生した1977~1979年の活動期以降, 2008年に再び噴気活動が始まった. 2016年, 筆者らは当該の火山活動の評価に資する基礎データの蓄積を目的として, 大穴火口およびその周辺地域に噴出する火山ガスの化学組成, および凝縮水の水素・酸素安定同位体比の分析に着手した.
火山ガスの採取は2016年7月に一切経山南斜面の大穴火口内の3地点(東から, W3b, W5, W6b), 同年10月にはW3b, W5, W6bに加えて大穴火口の南約300m地点(W10)の噴気孔群で実施した. 火山ガスの採取にあたっては, 噴気孔に空気の混入を避けるようにチタン製の管を挿入し, これに接続したゴム管を通じて5M-KOH水溶液を封入した真空ガラス瓶に火山ガスを導入したほか(Giggenbach and Goguel, 1989), 火山ガス中のSO2とH2Sの比を決定するために現地で塩酸酸性としたKIO3-KI溶液と火山ガスを反応させて回収した(小沢, 1968). これらのほかに, 水素および酸素安定同位体比(δDおよびδ18O)分析に供するために火山ガスを水冷したガラス管に導入して凝縮水を回収した. 火山ガスの化学組成の分析は主に小沢(1968)の手法に従い, 凝縮水のδDおよびδ18O値の分析にはキャビティリングダウン分光分析法を使用した.
現地で測定した火山ガスの出口温度は, W3b, W10<W5<W6b であり, 4地点を調査した2016年10月時点では, W3b=94.7℃, W5=101.8℃, W6b=136.8℃, W10=95.4℃であった. 採取した火山ガスに含まれるN2, Ar, Heの三成分の相対組成は, 安山岩質マグマに特有な火山ガスと空気, あるいは空気に飽和した地下水との混合領域にあり, 当該火山ガスがそれらの混合から成ることが分かる(Fig. 1). 火山ガスの凝縮水のδDとδ18O値は大局的に高温の火山ガスで高く, 低温の火山ガスで低い傾向を示し, 火山ガスの出口温度が現地標高の沸点に近いW3b, W10の火山ガスは天水線(GMWL: δD = 8・δ18O + 10; Craig, 1961)よりも低δ18O側に位置する(Fig. 2). また, 4地点の火山ガスのδD・δ18O値から計算される直線の傾きは3.6と小さく, これらの火山ガスは地下水のとの混合のほかに, 気液分離の影響を受けていると考えられる. 本発表では, 上記の他にこれまでの調査で得られた分析結果を公表するとともに, それらに基づいた当該火山ガスの基本的な地球化学的特徴を示す.
火山ガスの採取は2016年7月に一切経山南斜面の大穴火口内の3地点(東から, W3b, W5, W6b), 同年10月にはW3b, W5, W6bに加えて大穴火口の南約300m地点(W10)の噴気孔群で実施した. 火山ガスの採取にあたっては, 噴気孔に空気の混入を避けるようにチタン製の管を挿入し, これに接続したゴム管を通じて5M-KOH水溶液を封入した真空ガラス瓶に火山ガスを導入したほか(Giggenbach and Goguel, 1989), 火山ガス中のSO2とH2Sの比を決定するために現地で塩酸酸性としたKIO3-KI溶液と火山ガスを反応させて回収した(小沢, 1968). これらのほかに, 水素および酸素安定同位体比(δDおよびδ18O)分析に供するために火山ガスを水冷したガラス管に導入して凝縮水を回収した. 火山ガスの化学組成の分析は主に小沢(1968)の手法に従い, 凝縮水のδDおよびδ18O値の分析にはキャビティリングダウン分光分析法を使用した.
現地で測定した火山ガスの出口温度は, W3b, W10<W5<W6b であり, 4地点を調査した2016年10月時点では, W3b=94.7℃, W5=101.8℃, W6b=136.8℃, W10=95.4℃であった. 採取した火山ガスに含まれるN2, Ar, Heの三成分の相対組成は, 安山岩質マグマに特有な火山ガスと空気, あるいは空気に飽和した地下水との混合領域にあり, 当該火山ガスがそれらの混合から成ることが分かる(Fig. 1). 火山ガスの凝縮水のδDとδ18O値は大局的に高温の火山ガスで高く, 低温の火山ガスで低い傾向を示し, 火山ガスの出口温度が現地標高の沸点に近いW3b, W10の火山ガスは天水線(GMWL: δD = 8・δ18O + 10; Craig, 1961)よりも低δ18O側に位置する(Fig. 2). また, 4地点の火山ガスのδD・δ18O値から計算される直線の傾きは3.6と小さく, これらの火山ガスは地下水のとの混合のほかに, 気液分離の影響を受けていると考えられる. 本発表では, 上記の他にこれまでの調査で得られた分析結果を公表するとともに, それらに基づいた当該火山ガスの基本的な地球化学的特徴を示す.