JpGU-AGU Joint Meeting 2017

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[JJ]Eveningポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-VC 火山学

[S-VC51] [JJ] 1986伊豆大島噴火を読み直す、温故知新

2017年5月21日(日) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (国際展示場 7ホール)

[SVC51-P04] 岩石学的にみた伊豆大島火山のマグマ供給系

*浜田 盛久1 (1.国立研究開発法人海洋研究開発機構地球内部物質循環研究分野)

キーワード:伊豆大島火山、マグマ供給系、島弧ソレアイト、Caに富む斜長石、複数深度における結晶分化作用

伊豆大島火山は,伊豆弧の火山フロント上の活火山であり,低カリウム島弧ソレアイトマグマを噴出している.過去150年間においては,30-40年間に1回の割合で噴火を繰り返している(1876-1877年噴火, 1912-1914年噴火, 1950-1951年噴火, 1986-1987年噴火).このような経験則に照らせば,最新の噴火である1986-1987年噴火から既に30年が経過しており,近い将来,次の噴火が起こる可能性が高い.

本発表では,伊豆大島火山の次の噴火が,2011年3月11日に発生したM9の東北地方太平洋沖地震によって誘発されるという仮説について検討する.9世紀及び17世紀から20世紀にかけての時期に,伊豆大島火山の火山活動は周辺で発生した地震(M≧7)と関連して活性化したことが知られており,両者の関係は単なる偶然とは考えにくい.ただし,ある噴火は地震発生後に起こり,別の噴火は地震発生前に起こった,という具合に,過去の事例に照らして,地震の発生が火山噴火を誘発したとは限らない.今後,さらなる検討が必要であるが,当時の特異な広域テクトニクスが(巨大)地震発生と火山活動の活性化の両方を同時期に引き起こしたと考えるべきであろう.

伊豆大島火山の次の噴火が準備される場であるマグマ供給系において,どのようなマグマプロセスが進行しているのかを理解しておくことは,我々が次の噴火に備えるために重要である.そこで本発表では,伊豆大島火山の火山岩の岩石学的研究から明らかにされているマグマ供給系についても概説する.伊豆大島火山の無斑晶噴出物(液)の組成には,高Al/Siトレンドと低Al/Siトレンドを見出すことができ,火山岩の組成バリエーションはこれらの2つのトレンドの中間にプロットされる.含水玄武岩マグマの融解実験の結果に基づくと,高Al/Siトレンドは深度9 kmのマグマ溜まりでH2Oに飽和したマグマ(~5 wt.% H2O)が結晶分化作用をすることによって,低Al/Siトレンドは深度4 kmのマグマ溜まりでH2Oに飽和したマグマ(~3 wt.% H2O)が結晶分化作用をすることによって,それぞれ導くことができる.すなわち,深度の異なる複数のマグマ溜まり中において,H2Oに飽和したマグマの結晶分化作用が進行し,噴火時にそれらのマグマが混合して噴出したと解釈することができる.噴火前のマグマがH2Oに富むことは,伊豆大島火山の次の噴火時に,もし火道を上昇するマグマからの脱ガスが不十分であれば,噴火が爆発的になり得ることを示唆する.