JpGU-AGU Joint Meeting 2017

講演情報

[JJ] ポスター発表

セッション記号 G (教育・アウトリーチ) » 教育・アウトリーチ

[G-02] [JJ] 災害を乗り越えるための「総合的防災教育」

2017年5月20日(土) 13:45 〜 15:15 ポスター会場 (国際展示場 7ホール)

コンビーナ:中井 仁(小淵沢総合研究施設)、宮嶋 敏(埼玉県立熊谷高等学校)、根本 泰雄(桜美林大学自然科学系)、小森 次郎(帝京平成大学)

[G02-P06] 四国地域の地震津浪碑の3次元デジタルアーカイブ化とデータベース化に向けた取り組み

*谷川 亘1浦本 豪一郎3内山 庄一郎2折中 新3山品 匡史3岡本 桂典4原 忠3 (1.国立研究開発法人海洋研究開発機構高知コア研究所、2.国立研究開発法人防災科学技術研究所、3.高知大学、4.高知県立歴史民俗資料館)

キーワード:南海地震、デジタルアーカイブ、地震津波碑、PhotoScan、sketchfab

四国各地では沿岸部を中心に過去の地震と関連の深い石造の地震津波碑が建立されており、こうした石碑は地震災害記録の保存、後世への伝承、犠牲者に対する供養という機能を持つ。また高知県内には、津波の最高到達地点を示す石碑も確認できる。そのため、地震津波碑は過去からの教訓を学ぶ防災教育教材としての利用価値が高いと考えられるが、あまり防災教育の現場では有効活用されていない。その理由として、一般の人が石碑情報および関連文献にアクセスすることが困難であること、石碑に刻まれる文字の判読が困難であること、石碑の文字情報から津波到達距離などの地理情報を把握しづらいこと、が挙げられる。また、多くの石碑は野ざらしで設置されているため、雨風による風化や将来発生する地震災害による破損と紛失が避けられない。
そこで本研究は、地震津波碑の(1)3次元デジタルモデル(2)碑文の記述内容と材質と建立日などの付加情報(3)地図情報、を統合したデータベース化の整備を行い、地震碑の3次元デジタルモデルの閲覧機能を軸とした日本全国各地の地震津波碑のデータベース構築を目指す。
本研究は、これまで高知県内の地震津波碑と津波最高潮の碑(約30個)を対象に3Dモデルの構築と石碑の情報整理を実施した。3Dモデルの構築はAgisoft社製PhotoScanを用いて行った。モデル構築に使用した画像データは、デジタルカメラ(RICOH社製GR)で撮影し、対象物および彫られている文字が明瞭に見えるようにPhotoshop(Adobe社)を用いて露出補正とホワイトバランスを実行した。構築した3DモデルはWebGLベースの3DモデルビューアーであるSketchfab[https://sketchfab.com/]にアップロードし、ウェブブラウザ上で石碑の立体画像を観賞できるようにした。また、ブラウザを介さなくてもモデルが閲覧できるように3Dpdf形式でのデータを構築した。さらに、Sketchfabと3Dpdfの注釈機能を活用して、文字の書き下しや解説文をモデルに追加した。岩石の種類、および岩石物理化学的な情報は石碑の石材の起源(採取地点)の推定に役立つため、本データベースでは測定した石碑の帯磁率と色の値も掲載する。石碑の位置情報は防災科学技術研究所が開発した「eコミマップ」を利用して公開し、利用促進を図る。関連する地震ごとに県単位で石碑を地図上に表示し、市町村が発行する津波ハザードマップを重ね合わせて石碑との位置関係を把握できるようにする。
作成した3Dモデルは、3Dプリンターで3D複製できるため、複製は学校教材や博物館などでの展示などの活用が期待される。現在、高知県内の地震津波碑のデータ収集を進めており、高知県内のデータベースが整備でき次第、ウェブ公開をする予定である。今後、徳島県内の地震津波碑についても3次元デジタルモデルの構築を実施し、高知県内のデータと統合させて、四国地域のデータベース化の整備を進めていく。