JpGU-AGU Joint Meeting 2017

講演情報

[JJ] 口頭発表

セッション記号 G (教育・アウトリーチ) » 教育・アウトリーチ

[G-03] [JJ] 地球惑星科学のアウトリーチ

2017年5月21日(日) 10:45 〜 12:15 A03 (東京ベイ幕張ホール)

コンビーナ:植木 岳雪(千葉科学大学危機管理学部)、小森 次郎(帝京平成大学)、長谷川 直子(お茶の水女子大学)、大木 聖子(慶應義塾大学 環境情報学部)、座長:小森 次郎(帝京平成大学)

11:30 〜 11:45

[G03-10] 震源の4次元可視化ツール開発 ~熊本地震の理解を深める教育教材として~

*庄司 真史1河合 研志2 (1.(株)ライブ・アース、2.東京大学)

キーワード:地震、震源、4次元可視化、断層面、教材、授業

地震大国日本では、3.11後も、熊本・鳥取・福島地震などM6クラスの活発な地震活動が継続しており、地震にますます注目が集まっています。

地震は地下断層面が滑って起きる現象なので、「面」で理解する必要があります。数十年もの間、ニュースではバツ(X)1つの本震だけが表示されてきましたが、本来は断層面が立体的にずれ、地上の広い地域に影響を与えています。例えば、3.11では南北約500km、東西約200kmのおよそ10万km2という広範囲全てが震源域とされているにも関わらず、仙台の数十km東方の一点だけが揺れたかのように語られています。また、断層面の地下での「姿勢」も重要です。例えば、断層面が斜めにある場合と鉛直方向にある場合とでは、その直上の地表に与える影響の広がりも異なってきます。

断層面は目視できませんが、このように、地下断層の滑りをより深く理解したいというニーズが長年ありました。例えば、研究分野では、震源データを3次元的に可視化し、指で角度を変えたり拡大・縮小したりして地震を直感的に理解するツールが、マスメディアの分野では、わかりやすい地震の立体表示が求められていました。しかし、大量の震源データを処理するCPU/GPUなどのハードウェアと、3次元可視化を容易に実現するソフトウェアの両方の問題がボトルネックとなり、これまでは高度なプログラミングを必要とする高価な専門ソフトウェアしかありませんでした。

この問題を解決すべく、4D可視化技術を持つ㈱ライブ・アース(東京都港区、代表:庄司真史)は、東京大学理学系研究科河合研究室との共同研究で、震源データの3次元可視化と可動時間軸の実装により、地下断層面を直感的に把握できる地震の4次元可視化ツール 「shingen(シンゲン)」 を開発しました。チップの高度化などのハードウェア進化と、3次元情報処理を可能にするライブラリの登場などのソフトウェアの進化により、高度な3D情報処理を容易に実現できる技術インフラが整ったことも、今回のツール開発を後押ししました。これにより、地震の位置、規模及び発生日時の情報から、視覚的に地震発生の状況のより正確な把握ができると共に、地下の断層面の適切な推定が行えるようになりました。

現在、マスメディア等と追加開発を進め、アカデミアの知見を社会に積極的に還元しようとしています。また、教育分野でも、私が担当した、2016年7月4, 5日の教養学部「惑星地球科学実習」で、地球科学の初学者向けに活用し、学生の皆さんから立体思考の素晴らしいレポートがたくさん提出されています。

今後も地震の科学的アウトリーチ活動を積極的に進めていきたいと考えています。