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[G04-09] 地学教育で扱われる火成岩分類の問題点
ー沈積岩の識別とマグマ冷却過程の復元ー
キーワード:火成岩、超マフィック岩、沈積岩
はじめに
火成岩の分類について,高等学校学習指導要領「地学基礎」では,造岩鉱物の種類による色調(色指数)の違いが化学組成(SiO2)と関連することを取り上げている.国際地質科学連合(IUGS)の火成岩分類委員会(Le Maitre, 2002)は,深成岩の分類は実際の鉱物組成(モード)に基づき,火山岩の場合は細粒結晶〜ガラスを含むことから化学組成(SiO2 wt%)による分類法を推奨している.したがって,「地学基礎」教科書では,IUGSに準拠して,色指数とSiO2 wt%が対応する火成岩分類図表が使われていることになる.しかしこの分類表は,様々な種類のマグマが,その組成を維持したまま冷却固化した火成岩について適用されることに留意する必要がある.深成岩の場合,玄武岩質マグマは粘性が低いため,マグマ溜まり内で結晶化が進む際,結晶の分離が容易に起こり,結晶だけが濃集して沈積岩ができやすい.この場合,玄武岩質マグマの初期晶出のかんらん石・輝石が濃集するとかんらん岩などの超マフィック岩が形成されるが,この沈積岩の化学組成はマグマ組成を反映しない.本発表では,超マフィック岩〜マフィック岩からなる岩体の実例をもとに,沈積岩の識別方法を紹介し,火成岩の分類の問題点とその発展的活用の例を提案する.
秋田県の掘削コア中の超マフィック岩の岩石記載的特徴
本坑井(槻田SK-1)では深度900〜1200 mにおいて,台島-西黒沢期(新第三紀中新世)の火山岩・堆積岩中に超マフィック岩〜マフィック岩の貫入岩がみられる.この貫入岩の起源については,オフィオライト的性格,すなわち,上部マントル〜下部地殻がプレート運動によって上昇した岩体の可能性や,かんらん石ドレライトの沈積岩である可能性が指摘されている(大口・千葉,1984,千葉・大口,1984).本超マフィック岩は,かんらん石と単斜輝石を主要造岩鉱物とするかんらん岩であり, マフィック鉱物の集積組織とともに,MgO, FeO含有量の規則的変化が認められる.かんらん石のMg値(Mg/(Mg+Fe))は,マントルかんらん岩の化学組成とは非平衡であり,玄武岩質マグマから晶出したことを示す.さらに,近接して貫入するマフィック岩(ドレライト)の全岩化学組成は,超マフィック岩の全岩化学組成とその構成鉱物であるかんらん石と単斜輝石の化学組成が描く組成トレンドの延長線上にプロットされる.これらを総合すると,本坑井の超マフィック岩は,玄武岩質マグマからつくられた沈積岩であり,その残液マグマがドレライトを形成したと考えられる.本坑井の事例研究によって,超マフィック岩がマントルかんらん岩なのか玄武岩質マグマからの沈積岩なのかを区別することが可能となり,マグマだまりにおける冷却過程をよりダイナミックに理解できることが明らかとなった.
引用文献
Le Maitre (2002) Cambridge University Press, 236 pp.
大口健志・千葉とき子(1984)日本地質学会第91年年会講演要旨集.
千葉とき子・大口健志(1984)日本火山学会講演要旨.
火成岩の分類について,高等学校学習指導要領「地学基礎」では,造岩鉱物の種類による色調(色指数)の違いが化学組成(SiO2)と関連することを取り上げている.国際地質科学連合(IUGS)の火成岩分類委員会(Le Maitre, 2002)は,深成岩の分類は実際の鉱物組成(モード)に基づき,火山岩の場合は細粒結晶〜ガラスを含むことから化学組成(SiO2 wt%)による分類法を推奨している.したがって,「地学基礎」教科書では,IUGSに準拠して,色指数とSiO2 wt%が対応する火成岩分類図表が使われていることになる.しかしこの分類表は,様々な種類のマグマが,その組成を維持したまま冷却固化した火成岩について適用されることに留意する必要がある.深成岩の場合,玄武岩質マグマは粘性が低いため,マグマ溜まり内で結晶化が進む際,結晶の分離が容易に起こり,結晶だけが濃集して沈積岩ができやすい.この場合,玄武岩質マグマの初期晶出のかんらん石・輝石が濃集するとかんらん岩などの超マフィック岩が形成されるが,この沈積岩の化学組成はマグマ組成を反映しない.本発表では,超マフィック岩〜マフィック岩からなる岩体の実例をもとに,沈積岩の識別方法を紹介し,火成岩の分類の問題点とその発展的活用の例を提案する.
秋田県の掘削コア中の超マフィック岩の岩石記載的特徴
本坑井(槻田SK-1)では深度900〜1200 mにおいて,台島-西黒沢期(新第三紀中新世)の火山岩・堆積岩中に超マフィック岩〜マフィック岩の貫入岩がみられる.この貫入岩の起源については,オフィオライト的性格,すなわち,上部マントル〜下部地殻がプレート運動によって上昇した岩体の可能性や,かんらん石ドレライトの沈積岩である可能性が指摘されている(大口・千葉,1984,千葉・大口,1984).本超マフィック岩は,かんらん石と単斜輝石を主要造岩鉱物とするかんらん岩であり, マフィック鉱物の集積組織とともに,MgO, FeO含有量の規則的変化が認められる.かんらん石のMg値(Mg/(Mg+Fe))は,マントルかんらん岩の化学組成とは非平衡であり,玄武岩質マグマから晶出したことを示す.さらに,近接して貫入するマフィック岩(ドレライト)の全岩化学組成は,超マフィック岩の全岩化学組成とその構成鉱物であるかんらん石と単斜輝石の化学組成が描く組成トレンドの延長線上にプロットされる.これらを総合すると,本坑井の超マフィック岩は,玄武岩質マグマからつくられた沈積岩であり,その残液マグマがドレライトを形成したと考えられる.本坑井の事例研究によって,超マフィック岩がマントルかんらん岩なのか玄武岩質マグマからの沈積岩なのかを区別することが可能となり,マグマだまりにおける冷却過程をよりダイナミックに理解できることが明らかとなった.
引用文献
Le Maitre (2002) Cambridge University Press, 236 pp.
大口健志・千葉とき子(1984)日本地質学会第91年年会講演要旨集.
千葉とき子・大口健志(1984)日本火山学会講演要旨.