JpGU-AGU Joint Meeting 2017

講演情報

[JJ] 口頭発表

セッション記号 G (教育・アウトリーチ) » 教育・アウトリーチ

[G-04] [JJ] 小・中・高等学校,大学の地球惑星科学教育

2017年5月20日(土) 10:45 〜 12:15 301A (国際会議場 3F)

コンビーナ:畠山 正恒(聖光学院中学高等学校)、座長:畠山 正恒(聖光学院中学高等学校)

11:45 〜 12:00

[G04-11] コリオリ力を「体感」できる実験

*中島 健介1 (1.九州大学大学院理学研究院地球惑星科学部門)

キーワード:コリオリ力、回転座標系、地球力学、地球流体力学

はじめに:コリオリ力は納得しにくい?

コリオリ力は気象学・海洋学をはじめとする地球惑星科学において極めて重要な概念であり, これを, 数式上にとどまらず実体験として認識することは, 極めて望ましいと考えられる. しかし, 教科書などに書かれている多くの実験, たとえば, 回転台上のボールの運動からコリオリ力を見いだすことは, 運動と力の関係(ニュートンの第二法則)が前提となっており, 直感的に初学者が納得することは容易でない. この困難に, コリオリ力がみかけの力(慣性力)の一種であることが加わり, 多くの混乱が生じているように思われる.

本発表では, 教室や一般家庭でコリオリ力を体感することができるいくつかの実験設定があることに注意を喚起し, その理解の増進の一助としたい.

目標: 身近な実験で「体で感じる」

「力」は本来, 物体の運動の観察以前に, 自分の体で感じとることができるはずのものである. 実際, コリオリ力と同様に慣性力でありながら, 加速度運動に伴う慣性力や遠心力は, 加減速あるいは曲線運動する乗り物の中で自分に働く力(あるいは体を支えるのに必要な力)として, 子供にも直感的に認識される. そこでコリオリ力についてもこれらの慣性力と同様に「体感」することを目指す. さらに, 学校等の教室や一般家庭でも安価で容易かつ安全に行えることを条件にする.

実験その1:回転椅子上で物を振り回す

回転系に対して静止した実験者が, 手に持った物体を直線運動させる. このとき, 物体に働くコリオリ力を手で感じることができる. たとえば実験者が回転する椅子に座り, 手に軽く持った杖を頭上で振ってみると, 運動に伴って杖の速度に横向きに作用するコリオリ力を「手応え」として感じることができる. 椅子の回転方向を逆にすれば, コリオリ力の向きが反転することも感じ取れる. 問題点は, 「回転酔い」のために長時間は実験ができないことである.

実験その2:ジャイロスコープの実験の再解釈

「ジャイロスコープの実験」を回転しながら行い, 得られるトルクをコリオリ力に基づいて解釈する. たとえば, 車軸を延長した自転車の車輪を用意する. これを回転させて, 回転椅子に座らせた実験者に持たせる. その車軸を固定する努力を命じておき(特に, 傾けないように注意する),椅子を回転させると, 車軸を傾けるトルクを感じることができる.

このトルクは通常, 慣性系上において, 地球ごまの歳差運動などを例として, いわゆる「ジャイロスコープの原理」として説明される. しかしこのトルクは, 回転系から見ると, 車輪の各部の回転系に対する相対運動(のうち椅子の回転軸に直交する成分)に関わるコリオリ力(車軸の上側と下側で逆向きになることに注意せよ) がもたらすものとしても説明できる.

おわりに: 大きな回転台の必要性
実は, 最も直感的かつ有効な設定は, 大きな回転台(たとえば気象研究所の回転実験装置)の上で「直線的」に歩くことであり, これを回転台の「外」から観察すると, コリオリ力の起源(例えば Feynman ほか,1961;山岸,2013)を正確に理解することもできる. しかし, そのような回転台は, 各地の科学館等で散発的に作られつつも有効に活用されずに廃止されがちである. 危険性のために学校や児童公園などの回転遊具がほぼ全廃され, 子供が回転を体感する機会が激減していることを考えると, 科学館や大学などで大型回転台を設置することは, フーコーの振り子と同程度に意義深いと考える.

References:
山岸(2013): コリオリ力の「ユリイカ」一つの試み, 天気, 60, 85-88.
Feynman, Leighton, and, Sands (1961) : The Feynman Lectures on Physics, Vol.1, Section 19.4.