13:45 〜 14:00
[HCG30-01] 天竜川~遠州灘を例にした河川-海岸系の砂礫にはたらく円磨作用の特徴
キーワード:砂、円磨度、円磨作用、天竜川、遠州灘
砕屑粒子は河川から海浜へと運搬される過程で破砕作用や摩耗作用を受ける,すなわち角張ったり丸みを帯びたりしながら最終的に「円磨」される.こうした粒子の形状,特に輪郭の滑らかさを評価する「円磨度」は,砕屑物の堆積環境や運搬-堆積過程などを示す指標として,長年様々な研究で用いられてきた(Krumbein1941;宇津川・白井2016a).河川環境において,相対的に細かい礫は粗い礫に比べて円磨度が低い傾向が知られており(Sneed and Folk1958),Utsugawa(2017MS)は渡良瀬川水系の礫だけではなく粗粒な砂(径0.5 ~128 mm)においても,その傾向を確認した.細かな粒子がより角張る要因としては,粗い粒子より耐久性があること(Kodama1994)や運搬中の粒子同士の衝突しにくさ,また,新しく生産された,すなわち角張った粒子の供給(宇津川・白井2016b)があげられる.発表者らは,粒径と“運搬環境(水流条件,底質の粒径等)”によって,粒子にはたらく円磨作用が異なると考え,河川下流~海浜環境において,河川環境ではほとんど円磨されない傾向にある砂粒子の円磨度変化を検証した.
本研究では,砂粒子でも同定しやすい微粒子で構成され,運搬-堆積リサイクルの影響が少ない岩種(“軟らかい”頁岩および“硬い”チャート)を選定し,天竜川中流域のダム群より下流域から遠州灘海岸にかけての約62km計6地点において,砂粒子(粗粒砂~極粗粒砂;径0.5~2 mm)の円磨度を調べた.ふるい分けした試料から,デジタルマイクロスコープVHX-1000(KEYENCE社製;首都大学東京地理学教室所有)を用いて頁岩とチャートを選別した.円磨度は,画像解析型粒度分析装置FF-30micro(ジャスコインタナショナル社製;同上)に搭載されている画像解析ソフトウェアPIA-Proを用いて“O. Bluntness”(Pirard1993MS)を測定した.O. BluntnessはKrumbein(1941)の円磨度印象図の階級値と高い相関があり,独自に求めた換算式を用いてこの値から“Krumbein円磨度”を再計算した.
粗粒砂(径0.5~1 mm)と極粗粒砂(径1~2 mm)の頁岩およびチャートの円磨度(約110~130粒)を調べたところ,両岩種とも,全体的な傾向として,極粗粒砂よりも粗粒砂の方がやや低い円磨度平均値を示すとともに,海浜での運搬距離が長くなるにつれて円磨度が高くなる傾向が得られた.特に河口から最も遠い前浜での円磨度はチャートでも高い.石英粒子が河川よりも海浜での波の作用(粒子の往復運動)で顕著に円磨されることは以前から知られているが,本研究では,頁岩およびチャートでも同様の傾向が観察された.興味深い点として,河口付近(河口州前浜側および河口から約3 kmの前浜)について詳細に検討すると,頁岩の円磨度平均値が海浜環境であるにもかかわらず上昇しなかった.河口付近では,天竜川から供給された礫(主に径2~64 mm)が前浜表面に広く堆積しており,日常的な波の作用でも転動や跳動を繰り返している様子が観察される.こうした粗い粒子同士が波の作用によって衝突し,新たに生産された,すなわち角張った粒子の供給が河口付近の前浜では盛んであると推察される.
引用文献
宇津川喬子・白井正明 2016a.地理学評論89:329–346.
宇津川喬子・白井正明 2016b.日本地球惑星連合大会2016年大会要旨(HGM14-P07).
Kodama, Y. 1994. Jour. Sed. Res. A64: 76–85.
Krumbein, K. C. 1941. Jour. Sed. Pet. 11: 64–72.
Pirard, E. 1993MS. Doctoral Thesis submitted to Univ. of Liege (in French).
Sneed, E.D. and Folk,R.L. 1958. Jour. Geol. 66: 114–150.
Utsugawa, T. 2017MS. Doctoral Thesis submitted to Tokyo Metro. Univ.
本研究では,砂粒子でも同定しやすい微粒子で構成され,運搬-堆積リサイクルの影響が少ない岩種(“軟らかい”頁岩および“硬い”チャート)を選定し,天竜川中流域のダム群より下流域から遠州灘海岸にかけての約62km計6地点において,砂粒子(粗粒砂~極粗粒砂;径0.5~2 mm)の円磨度を調べた.ふるい分けした試料から,デジタルマイクロスコープVHX-1000(KEYENCE社製;首都大学東京地理学教室所有)を用いて頁岩とチャートを選別した.円磨度は,画像解析型粒度分析装置FF-30micro(ジャスコインタナショナル社製;同上)に搭載されている画像解析ソフトウェアPIA-Proを用いて“O. Bluntness”(Pirard1993MS)を測定した.O. BluntnessはKrumbein(1941)の円磨度印象図の階級値と高い相関があり,独自に求めた換算式を用いてこの値から“Krumbein円磨度”を再計算した.
粗粒砂(径0.5~1 mm)と極粗粒砂(径1~2 mm)の頁岩およびチャートの円磨度(約110~130粒)を調べたところ,両岩種とも,全体的な傾向として,極粗粒砂よりも粗粒砂の方がやや低い円磨度平均値を示すとともに,海浜での運搬距離が長くなるにつれて円磨度が高くなる傾向が得られた.特に河口から最も遠い前浜での円磨度はチャートでも高い.石英粒子が河川よりも海浜での波の作用(粒子の往復運動)で顕著に円磨されることは以前から知られているが,本研究では,頁岩およびチャートでも同様の傾向が観察された.興味深い点として,河口付近(河口州前浜側および河口から約3 kmの前浜)について詳細に検討すると,頁岩の円磨度平均値が海浜環境であるにもかかわらず上昇しなかった.河口付近では,天竜川から供給された礫(主に径2~64 mm)が前浜表面に広く堆積しており,日常的な波の作用でも転動や跳動を繰り返している様子が観察される.こうした粗い粒子同士が波の作用によって衝突し,新たに生産された,すなわち角張った粒子の供給が河口付近の前浜では盛んであると推察される.
引用文献
宇津川喬子・白井正明 2016a.地理学評論89:329–346.
宇津川喬子・白井正明 2016b.日本地球惑星連合大会2016年大会要旨(HGM14-P07).
Kodama, Y. 1994. Jour. Sed. Res. A64: 76–85.
Krumbein, K. C. 1941. Jour. Sed. Pet. 11: 64–72.
Pirard, E. 1993MS. Doctoral Thesis submitted to Univ. of Liege (in French).
Sneed, E.D. and Folk,R.L. 1958. Jour. Geol. 66: 114–150.
Utsugawa, T. 2017MS. Doctoral Thesis submitted to Tokyo Metro. Univ.