JpGU-AGU Joint Meeting 2017

講演情報

[EJ] 口頭発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-CG 地球人間圏科学複合領域・一般

[H-CG30] [EJ] 堆積・侵食・地形発達プロセスから読み取る地球表層環境変動

2017年5月24日(水) 13:45 〜 15:15 106 (国際会議場 1F)

コンビーナ:清家 弘治(東京大学大気海洋研究所)、高柳 栄子(東北大学大学院理学研究科地学専攻)、成瀬 元(京都大学大学院理学研究科)、山口 直文(茨城大学 広域水圏環境科学教育研究センター)、座長:清家 弘治(東京大学大気海洋研究所)、座長:山口 直文(茨城大学 広域水圏環境科学教育研究センター)

14:15 〜 14:30

[HCG30-03] 確率論的評価による鎌倉市および逗子市の海岸低地埋積過程モデル

*萬年 一剛1 (1.神奈川県温泉地学研究所)

キーワード:干潟、埋積過程、歴史地震、年代測定、相模湾、確率論的評価

相模湾北東岸に位置する鎌倉市および逗子市の海岸低地では、現在の海面高度付近に礫質の干潟堆積物が広く認められる。この堆積物の炭素14年代値は3つのグループを形成し、各々のグループの年代は、歴史文書から確認出来る大地震の時期に近接している。このことから、干潟堆積物の形成がテクトニックな変動を反映している可能性が指摘された(萬年ほか、2014;第四紀学会予稿)。しかし、年代値や限られたボーリングの地質観察からだけでは、干潟堆積物が徐々に拡大していった可能性を否定することは難しい。そこで、本研究では、干潟の埋積が連続的に行われた場合(Model 1)と、間欠的に行われた場合(Model 2)のどちらが観測された炭素14年代分布をより説明できるか、確率論的に考察した。
 まず、各埋積モデルについて干潟堆積物全体の炭素14年代分布モデルを求めた。この年代分布モデルから、実際のボーリング調査同様のサンプリングをした際、実際のボーリング調査で得られた炭素14年代分布と「似た」ものが得られる確率をp*と定義し、p*値をモンテカルロ法により計算しモデル間で比較した。ここで「似た」とする定義は、2標本の母集団の確率分布が異なっているか否かを調べる為に用いられるコルモゴロフ・スミルノフ(K-S)検定を用いた。また、Model 1については干潟の存続期間、Model 2は干潟の形成時期を可変のパラメータとしたほか、また干潟堆積物中の物質の平均滞留時間を様々に仮定し、実際のボーリング調査で得られたサンプルの年代分布を最も説明するシナリオを探索した。
 その結果、Model 1の最適解は干潟の存続期間がAD1800-500で、その時のp*値は0.0600であった。Model 2の最適解は干潟の形成時期が、AD1680および1180、780でp*値は0.2150であった。また、歴史地震(1703, 1257、878)と干潟の形成が関係しているというシナリオで、p*値は0.0942であった。Model 2の炭素14年代分布モデルと実際の年代分布を比較すると、1703年、1293年、1257年の地震に関連して干潟が形成または定置した可能性は高いと判断できたが、878年の地震に関しては関連性が薄いように見えた。
 以上のことから、鎌倉・逗子の海岸低地に認められる干潟堆積物は、1)連続的な埋積と言うより間欠的な埋積によって形成された可能性が高く、2)埋積の間欠性は歴史地震と関係している可能性があるが、3)その他の要因も考慮する必要がある、と結論できる。